【デイリー・コリア・フォーカス】26年5月22日号

皆さま、アンニョンハセヨ。
5月22日、金曜日です。ソウルから金浦へと戻り、自宅から「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。
今日の目次は以下の通りです。抱えている仕事が多すぎて過労気味なので、さっそく本文に入ります。
1. 李大統領「ネタニヤフ逮捕を判断」発言の読み方(上)国務会議での対話
2. 今日の時事韓国語「글로벌 AI 허브」
1. 李大統領「ネタニヤフ逮捕を判断」発言の読み方(上)国務会議での対話
李在明大統領がイスラエル政府の非人道的な行為に対し、ふたたび正面から批判を行いました。
ふたたび、というのは今年4月10日に李大統領はXを通じ、イスラエルを糾弾したことがあったからです。この時は2年前のイスラエル軍の蛮行を咎める内容でした。詳しくは下記のニュースレターをご覧ください。
今回はSNSではなく、実際の発言をもってイスラエルの問題を取り上げました。
発端は5月20日。この日、4時間以上にわたって生中継された国務会議(閣議)で、金珍我(キム・ジナ)外交部第2次官の報告が終わるや、李大統領はこう切り出したのでした。以下、当時のやり取りを見て行きます。
↑上記動画の45分10秒くらいからやり取りが始まります。54分頃まで続きます。生中継される国務会議です。国営放送KTVです。
李「追加の報告がないのならば、これは(報告と)直接関係はないが、ひとつ話をしてみなければなりません。今、イスラエルがガザ地区にボランティアに向かった、韓国人を含む船団をだ捕したり、爆沈させているのでしょう?記事が出ていましたが。その状況を説明してください。分かることがあるのでしたら」
金「はい。いま私たちが把握しているところによると、キム・アヒョンさんとキム・ドンヒョンさんの二人が、イスラエルに向かう途中で(ここで李大統領が「イスラエルでなくガザ地区でしょう」と指摘)、イスラエル軍により逮捕されました。そして一度目の事態の時と同じように、拘禁施設に拘禁した後、追放するという方式で進めると聞いています」
今回、二人の韓国人平和運動家は、ガザ地区を目指す救護船団に乗船していました。
50隻にのぼる船団は、5月18日と19日(現地時間)にかけて、ガザ地区から268キロ離れた公海上でイスラエル軍にだ捕され、この二人を含む約430人はイスラエル国内へと移送され、拘禁されていました。
国務会議に戻ります。
李「その(だ捕の)法的根拠はなんですか。そこ(だ捕地点)はイスラエルの領海ですか?」
金「イスラエルの領海の方に向かう状況でした」
李「イスラエルの領海に向かう所だったと?」
金「そうです」
李「ガザ地区に向かうのに、イスラエルの領海を通らなければならないのですか?」
金「その近くに、イスラエル軍がずっとモニタリングを…」

国務会議でやり取りする金珍我外交部第2次官と李在明大統領。金珍我次官は1979年生まれ。 米国で国際関係学の博士号を取得し、韓国国防研究院や韓国外国語大学教授を経て、政権発足直後の25年6月から現職。ちなみに実際の席は離れています。KTVをキャプチャ。
李「(苛立ちを隠さない様子で割り込む)私が言いたいのは、(そこが)イスラエルの領海なのか。イスラエルの主権を侵害したのかということです。船団が。船が一隻二隻ではないということでしょう。(金次官は沈黙)イスラエルの領海なのですか。それとも、先ほどイスラエルの領海を目指し進んだと言いましたが、なぜ船団がイスラエルの領海を目指すのですか。ガザ地区に向かうのではないですか。ガザ地区はイスラエルと関係のない場所でしょう」
金「(イスラエルが)その地域の管轄権を主張しているため、モニタリングを行うラインを…」
李「モニタリングを行うラインがあり、そこを侵犯したからと逮捕したというのですか?正確に話してください。(金次官が沈黙するや、苛立った様子で)分からないのですか、それとも立場が困難になるから話さないのですか。ここはイスラエル政府でもあるまいに…分からないのですか?」
金「一応、私たちが把握する限りでは、(イスラエルが)そのように、入ってくる船を逮捕する状況ということです」
李「だから、それが不法なものか合法であるかを判断しなければならないでしょう。誰か分かる人はいませんか?」
ここで魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長が助け船を出します。青瓦台(大統領府)の三室長の一人で、政府の外交安保政策のコントロールタワーの長です。
魏「安保室長です。今、イスラエルがガザ地区に対し軍事作戦を行い、軍事的な統制を行っているため、ガザ地区への出入りに対し、イスラエルが統制しています。その延長戦上で、イスラエルは船舶であろうと人員であろうと、出入りを統制する立場です」
李「(大きな声で)イスラエルの領海ではないのでしょう?」
魏「領海ではありませんが、ガザ地区の全体をイスラエルが軍事的に統制しています」
李「不法に侵犯したということですね。国際法的には」
魏「その部分は精査しなければなりません。なぜかというと、ハマスがイスラエルを攻撃し、2000人近い人々を殺傷したことから始まりました。そしてイスラエルが対応し、進入し作戦を行い、全地域を統制しています」
ここでさらに、国家安保室の任雄淳(イム・ウンスン)第二次長が助け船を出します。魏安保室長の下に三人の次長がいますが、第二次長は外交を担当しています。
任「大統領、安保第二次長です。今おっしゃった件は国際法的にも、とても議論となっているイシュー(問題)です。一部では今、イスラエルの行為は航行の自由という国際法的な原則を違反しているため不法であると主張しています。反面、イスラエルは今の交戦状態で海上封鎖措置は合法的であると反駁しています。おっしゃった部分は私たちがもう少し検討し、追加報告をするようにします」

任雄淳国家安保室第二次長。1988年から外交官一筋の外務官僚出身です。元駐カナダ全権大使。KTVをキャプチャ。
李「イスラエルが…そうするとイスラエルが他国を侵略し戦闘中であるから、イスラエルは思い通りに第三国の国籍の船をだ捕し、最近みるところによると、えい航する船舶の数が多すぎて、はじめから船舶のエンジンを爆破し沈没させ、船員だけ逮捕するという記事があった。いずれにせよ、私が述べたい核心的な内容は、そこ(だ捕地点)がイスラエルの領土だったのかということです」
魏「違います。イスラエルの領土ではないが、イスラエルがその地域に向けた軍事行動をしながら、軍事的な統制を加えている状況です。イスラエルの立場では交戦状態となります」
李「交戦ならば、交戦国同士が何かすることについて私たちが関与するものではないですが、第三国の支援ボランティアに向かう第三国の船舶をだ捕し、逮捕し、監禁したというのが、妥当なことですか?」
魏「出入りを統制する次元の話とイスラエルは説明しています。さらにその人たち(韓国人2人)に対しては、前回も私たちが『ガザ地区は入国禁止区域であるから入国しないように』と…」
李「(ひときわ大きな声で割り込む)彼らの(イスラエルの)土地ですか?イスラエルの領海ですか?」
魏「領海ではなく、領土でもありません」
李「それならば抗議しなければならないのではないですか?」
魏「現状は交戦状態、戦闘状態という特殊な状況という点が…」
李「交戦したら第三国の船舶を、思い通りにだ捕し捕まえてもいいのですか?」
魏「(ためらいながら)法的な側面はもう一度検討して…」
李「(大きな声で)いや、法だろうがなんだろうが、基本的な常識というものがあるでしょう。これもやはり善に関する話ではないですか。今、イスラエルのネタニヤフ総理に対して、逮捕令状が出ているでしょう。国際司法裁判所から」
魏「(重い声で)はい…。ICJ(国際司法裁判所)ではなく、ICC(国際刑事裁判所)からです」
李「その差はなんですか?」
魏「国際刑事裁判所というのが別にあります」
李「とにかく国際刑事裁判所で戦犯として認定され、逮捕令状が出ているということではないですか」
魏「そうです。そうですが私が今、正確に戦犯となっているかは分かりませんが逮捕令状が出ています…」
李「(かぶせながら)戦争犯罪者ということです」
魏「しかしその問題は複雑なので、今ここで議論するよりも、私たちが検討し、別途に報告をいたします」
李「いや、私たちの国民を捕まえたので話をしているのです」
魏「しかし、あの方達についてはもう少し複雑で、私たちが『行かないように』と言ったのに…」
李「(かぶせながら)複雑で、私たちが行かないよう勧告したにもかかわらず、そうしなかったのは私たちの内部の問題で、とにかく私たちの国民を国際法的に妥当でない方法で捕まえたのは事実でしょう」
魏「(小さな笑みと共に)それももう少し検討してみなければなりません」

李大統領の厳しい口調を受け止める魏聖洛国家安保室長。71歳。1979年から外交官生活をはじめ、ロシアや米国での長い勤務経験を持つ、韓国屈指の外交通。元駐ロシア特命全権大使を2011年11月から2015年5月にわたって務めた。25年6月から現職。「米国寄り」との批判を受けるも堅実な外交を進める。詳しくは次回。KTVより。
李「(少しあきれた様子で)私が見るに、あまりにもひどすぎます。あまりに非人道的で…。(魏室長は唇を噛む)そうですね、とにかく一旦は状況の把握を正確にして…今のところは外交関係などを考慮し、そのように言うのかもしれませんが、どう考えても、今、欧州のほとんどの国家では逮捕令状を発布し、自国にネタニヤフが来たら逮捕すると発表したでしょう。欧州の大部分の国でそうしませんでしたか?」
魏「大部分の国家がそうしている訳ではありません」
李「私が見たらかなり多かったが?」
魏「…」
李「私たちも判断してみましょう」
魏「(渋い表情で)はい、検討してみます」
李「これすらも…とにかくやり過ぎです。ならば私たちもどこか(領海を他国の船が)通過するからと捕まえてもよいのですか?最低限の国際規範というものがあるのですから。それを(イスラエルは)すべて破っているのではないですか」
魏「はい。様々な側面を検討し、すぐに報告いたします」
李「原則通りやりましょう。これまであまりにも多く我慢してきました。度を越しても、越しすぎです」
ここまで約9分のやり取りでした。長くなりすぎてしまうので、発言の事実関係を含め、この発言が持つ意味については、次回のニュースレターでお伝えします。
それでもこうして一連の発言を見てこそ、李大統領の問題意識がどこにあるのかが分かるというものです。
「もうこれ以上イスラエルの非道には耐えかねる」という感情がひしひしと伝わってきます。他方、魏聖洛室長の表情と口調からは、この対話がもたらす逆風を予感する雰囲気が伝わってきました。この日の李大統領の発言は突発的なもので、対話中の緊張感はかなりのものでした。
なお、韓国人活動家二人は、この李大統領の発言の効果か、同じように拘禁された他の活動家たちよりも一日早く釈放(追放)され、22日午前に、韓国に戻ってきました。「死ぬかもしれないと思った」と、イスラエル政府による暴力の様子を会見を通じ、振り返っています。
2. 今日の時事韓国語「글로벌 AI 허브」
ちょっと長いのですが、「グローバルAIハブ」です。あれれ、英語でしたね(笑)。
昨日21日、ソウル市内のホテルで「グローバルAIハブ」の発足式が行われました。韓国政府が音頭を取り、9つの国際機関と5つの国際開発銀行機関(MDBs)が参加する大規模な「協力プラットフォーム」です。
ひと言で、AI技術を発展途上国のために役立てる基盤です。重要なニュースなので、こちらも別途取り上げます。韓国はAIを新たな国家の基幹事業・分野として設定しているため、このような動きが盛んでとても興味深いです。

「グローバルAIハブ」発足式の様子。壇上が金民錫 (キム・ミンソク)国務総理。国務総理室提供。
今日はここまでです。
韓国はお釈迦様が生まれた「潅仏会」のため、来週月曜25日は公休日です。私は多分、今日の続きを配信すると思います。
それでは皆さま、よい週末をお過ごしください。
アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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