【デイリー・コリア・フォーカス】26年1月23日号
皆さま、アンニョンハセヨ。
韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」1月23日号をお送りします。
ありきたりですが、寒いですね。
野良猫用にと、家の前にいつもキャットフードが入ったどんぶりを出しておくのですが、ここ数日は寒さのせいか、毎日つつきに来るカササギ(韓国語ではカチ[까치])の姿があまり見えません。
カササギは朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)でも多く見られ、寒さに強いはずなのですが…。
近所の猫ちゃんです。名前は흰둥이(フィンドゥンイ、シロの意)です。
ということで、今日の目次です。金曜日ということで少し話題を多くしてみました。
1. ‘史上初’、韓国株価指数が5000台に
2. ‘世界初’、AI基本法に賛否両論
3. 北朝鮮のお酒を韓国で…南北交易、再開間近?
4. 朴槿惠元大統領の「説得」
5. 与党が第二野党に‘合体’を持ちかけ
6. 今日の時事韓国語「단식」
1. ‘史上初’、韓国株価指数が5000台に
韓国の地上波テレビは、いずれもゴールデンタイムにニュース番組をやると先日お話ししました。
昨日22日晩のKBS、MBC、SBSという地上波三社が、その番組の中でいずれも、韓国総合株価指数(KOSPIコスピ)が5000を突破したニュースをトップに取り上げました。
今年に入り、KOSPIの上昇率は17%、昨年の上昇率は75%と、世界一の上昇率とのこと。25年6月に李在明政権が発足してからの上昇率は50%以上に達します。昨年1月は2500だったKOSPIは、一年で二倍になりました。
これを牽引するのが、半導体・自動車・防衛産業といった韓国の主力製造業です。
時価総額1位はサムスン電子、2位はSKハイニックスといずれも半導体分野で世界屈指の企業ですが、両社は今年に入り50%近い上昇率となっています。世界的な「AIブーム」の恩恵をモロに受けているといいます。
防衛産業については、李在明大統領みずから「世界4大強国に育てる」と公言しており、政府の支援が続いています。
さらに25年6月に李在明政権が発足して以降、商法が改正されるなど、株主を優遇する基調を前面に打ち出していること、成長のために財政を投入する姿勢なども影響しているとします。
購読している『京郷新聞』でも一面はこのニュースでした。
この日、KOSPIは最終的には4952でしたが、この上昇気流が当分は続くというのが大方の見方のようです。一方で「AIバブル」といった危険性もあり、振り幅は大きくなるという指摘もありました。
また、株価上昇が、建設投資の拡大や内需の回復といった実体経済に結びつかない現状を憂う声も、各メディアは伝えています。
『京郷新聞』は「株価の上昇→消費の増加→経済成長」という李在明大統領が描く「絵」を引用しながら、単純にこうはならないだろうと見通しました。
同紙によると全体の投資者の92.3%が一億ウォン(約1100万円)以下だけ株を保有しているとし、大きく儲けている人は少数であると指摘しています。
さらに、今年1月1日から16日にかけて、株式投資で損をした人は52.2%にのぼるとし、無分別な投資に警鐘を鳴らしています。
そういえば最近、私も普段よく行く個人経営のカフェで、アルバイトの若い方に「記者さんは株をやっていますか?」と聞かれました。家族でホクホクだそうです。
私はやっていませんが、20代や30代の若者にとって、もはや株式投資は当たり前とのことです。
2. ‘世界初’、AI基本法に賛否両論
22日、韓国で「AI基本法」が施行されました。
正式名称を『人工知能の発展と信頼基盤の造成などに関する基本法』という同法の目的について、韓国政府は「AI産業の発展振興」を掲げています。
李在明大統領は、韓国を米国と中国に次ぐ「AIトップ3強国」に成長させると公約していますが、このために3年毎に「AI基本計画」を作るとする内容が同法にあります。
同様の法律は世界初ということで、前項と同様に、各韓国メディアで大きく取り上げられています。
しかし、その論調は「歓迎」よりも「憂慮」の色が目立ちます。
例えば、生成AIを用いて作った制作物には、その旨を明記すべきという内容です。
その基準は多少複雑です。地上波『SBS』によると、例えばAIを用いて漫画を書いたり、グラフィックを作った場合には、AIを用いたと明記する必要はありません。一般の利用者も同様です。
同法が適用されるのは「AIモデルを開発したり、AIを活用したサービスを開発する事業者」であるというのです。
また、事実との区分が難しい「ディープフェイク」映像には、識別するための告知が必要であるとしています。
該当ニュースを伝える『SBS』。同ニュースをキャプチャ。
同法ではさらに、人間に大きな影響を与えるAIを「高影響AI」と定め、これを規制するとしています。
具体的には「エネルギー、飲用水、医療・保健医療、原子力、犯罪捜査、採用、与信審査、交通、公共サービス、教育」の分野です。
これらの分野で「利用者を保護するといった義務を負わせるようにした」といいます。
なお、現時点で上記の分野に当てはまる「高影響AI」は、自動車のレベル4自律走行(自動運転)程度とのことです。他はまだ開発の過程にあるといいます。
いずれのメディアもこれらの「規制」がAI産業の発展の足かせになるという、業界の憂慮の声を伝えています。
こうした声を受け、韓国政府も「1年以上は規制の猶予や、啓導期間(お試し期間)を定める」としています。
先に「世界初」と言及しましたが、同様の法律は米国やEUでも制定されているといいます。EUではAI産業の競争力低下を憂慮し、その施行を来年以降に遅らせていると『SBS』は指摘します。
李在明政権では、AI強国になるための「大韓民国人工知能行動計画」を発表し、次々に政策を発表しています。
『中央日報』によると、例えばAIに学習させる場合、コンテンツ著作権者の許可を「利用後に取ればよい」という形に変える方策も進められているといいます。
これに対し、韓国放送協会をはじめクリエイターたちから強い批判の声が上がっているそうです。
AIについて、私も少しずつ勉強を始めていますが、同じ「AI基本法」をとっても各メディアにより扱いが全く異なる点が、報じる立場としての難しさを物語っているようです。
『KBS』では、そもそもAI画像やAI映像が無分別に乱れ飛ぶSNSこそが問題とし、これを規制すべきではと指摘しています。なお、韓国が世界で一番、こうしたコンテンツを消費しているそうです。
3. 北朝鮮のお酒を韓国で…南北交易、再開間近?
断絶したままの南北関係をどうにか動かそうと、民間の交易からでも活性化させようという動きが、政府を中心に進んでいます。
北朝鮮産の食品や酒類の品質を第三国を含む機関が調査・管理し、これを韓国政府が保証するというシステムを構築するものです。
こうした書類は北朝鮮の会社が発行しない場合が多いため、韓国への輸入の際に足かせとなってきました。
迂回手段を作ることで、南北間の貿易がスムーズに進むというねらいがあります。関連法の改正が進んでいます。
これが実現する場合、昨年9月に韓国の業者が北朝鮮から仕入れ、安全性が確認できないことから、税関に留め置かれたままのブルーベリーのお酒など3500瓶の流通が可能になります。
なお当時、こうした交易は北朝鮮への経済制裁には抵触しないと、韓国政府は判断しています。
つまり、法改正が行われる場合、南北間の貿易が活性化する可能性があるということです。
今月21日、軍事境界線に近い南北接境地域を訪れる鄭東泳統一部長官(右)。北朝鮮との「二国家論」も提唱している。統一部提供。
また22日、韓国では「南北交流協力推進協議会」が開催されました。
政府・民間の委員で構成され、南北交流について検討する協議会です。オフラインで同協議会が行われたのは22年2月以来、4年ぶりとのことです。
この場で鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官は「平和を作る最も確実な道、必要なことは南北間の交流である」と述べています。
一連の動きの背景に李在明政権の意志がはたらいているということです。
本来はここで前出の法律改正案である「北韓産食品の搬入検査手続きに関する告示」を議決する予定でしたが、改正時に実務を担う省庁を加え、一~二週間後に議決されると、『京郷新聞』などが報じています。
政府が意志をもって南北関係を改善しようとする場合、小さな事でも、できることがあるというのが分かります。
北朝鮮側が輸出を禁止する可能性もありますが、まずは成り行きを見守ってみたいものです。
4. 朴槿惠大統領の「説得」
短い韓国政治の話を二つして終わります。
まず、最大野党・国民の力ですが、同党の張東赫(チャン・ドンヒョク)代表が今月15日から国会内で続けていた断食党争(ハンスト)を終えました。
断食は、二つの特別検察を与党・共に民主党に受け入れさせるために行われていました。
統一教会と共に民主党との関わりと、地方議員に公認を与えるために該当地域の国会議員が収賄していた疑惑を明らかにすべきというものです。
しかしこれを与党や政府はこれを完全に黙殺したため、張東赫氏の断食は迷走し、行き場を無くしていました。世論調査でも国民の力の支持率が上がることはありませんでした。
これにケリをつけたのは、なんと朴槿惠(パク・クネ)元大統領でした。
22日に国会を訪れ「命をかけた闘争の真情性を国民は認めている」と慰労し、「健康を回復させる」よう一種の説得をし、張氏が受け入れました。
張東赫代表(左)を慰労する朴槿惠元大統領。国民の力提供。
朴槿惠氏の訪問はサプライズでした。
ですが朴槿惠大統領も、2017年3月に罷免されています。
同党の党員でもない人物、罷免された元大統領が来たことで、逆に同党が「下り坂」にある現実が浮かび上がったとみる向きもあるようです。
ちなみに、統一教会との関わりについて、与党は「統一教会・新天地」という二つの宗教と政界の関係を捜査する、特別検察の導入を主張しています。
「新天地」というのはキリスト教系の新興宗教ですが、国民の力、とりわけ尹錫悦氏とのベッタリな癒着が連日報じられています。これも国民の力のアキレス腱です。
5. 与党が第二野党に‘合党’を持ちかけ
22日には、もう一つのサプライズがありました。
この日午前、与党・共に民主党の鄭清来(チョン・チョンレ)代表が緊急記者会見を開き、祖国革新党へ「党を合体しよう」と持ちかけたのです。
祖国革新党とは、曺国(チョ・グク)元法務部長官が前回の総選挙(国会議員選)直前の24年2月に設立した党で、同4月の総選挙では比例のみで12議席を獲得しました。国民の力に続く第二野党です。
共に民主党との差別化のため、同党よりも「左」を志向しており、個性的な議員もいるものの、最近ではやや存在感が薄れていました。
鄭清来代表が、自党の最高委員にも相談せずに決めたという合体案は、6月3日の統一地方選での圧勝を目的とするものと一般的に見られています。
李在明政権が約6割の支持率を維持していることから、与党にとって有利な選挙であることは変わりませんが、同じ進歩派かつ急進的な層が支持者に多い祖国革新党を加えることで、勝利をさらに盤石にしようという算段です。
また、今年8月に党代表の任期が切れる鄭清来氏が、再選をねらうため、自身の権力基盤を固めようとしているのではという解釈もあります。
いずれにせよ、両党ともに合体には党員過半数の賛成が前提となります。「中道」を標榜する共に民主党が、どんどん大きくなっていくのでしょうか。
6. 今日の時事韓国語「단식」
「タンシッ」と読みます。漢字では「断食」です。ハンストは「단식투쟁(タンシットゥジェン)」と呼ばれます。
韓国では政治家が断食を意見貫徹の手段に選ぶことがあります。その場合にも、水やミネラルを摂取します。このため、10日以上も続けることが可能です。
今日はここまでです。
なお、今か今かと待ち望んでいる『京郷新聞』の北朝鮮ロシア派兵連載記事は、第三弾がなかなか出てきません。出次第、また内容をお伝えします。
午前中に用事があり、発行が少し遅れましたが、来週は逆に早めていきます。
それではよい週末をお過ごしください。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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