【デイリー・コリア・フォーカス】26年1月16日号
皆さま、アンニョンハセヨ。韓国の徐台教です。
1月16日の「デイリー・コリア・フォーカス」をお届けします。
一月も半分が過ぎましたね。
ご存知のように(?)昨年9月末に『分断八〇年 韓国民主主義と南北統一の限界』という本を日本で出しました。
これを出すまでの数年間は、一月が半分過ぎるまでの間に原稿が進んでいないと、まるで一年の半分が過ぎたかのように焦っていたものです。
ようやくその苦しみから逃れることができたのですが、そんな呑気なことも言っていられません。毎日200冊の新刊が出るとされる中、拙著の売れ行きも下降気味です。
「売上げの限界」を最大限遠ざけたいというのが、今の願いです。
まだお手に取っていない方がいらっしゃいましたら、書店での購入や図書館へのリクエストという形で、ぜひ「南北分断」に関する深い話に触れてみてください。
いきなりの宣伝でした。
今日の目次は以下の通りです。
1. 「真実・和解財団」設立の必要性とは
2. 米財務長官が韓国ウォンを「サポート」
3. 今日16日、尹錫悦に初めての一審判決
4.「ソウル~平壌~北京」高速鉄道、李氏が習氏に提案
5. 今日の時事韓国語「두쫀쿠」
1. 「真実・和解財団」設立の必要性とは
「過去事」という韓国語があります。韓国語で同じ発音(クァゴサ)の「過去史」と間違えて表記される場合もありますが、過去の出来事という意味です。
なぜ「史」ではないのか。それは、歴史になるにはまだ、じゅうぶんに解明が足りないという意味を含んでいるからではないかと、私は勝手に理解しています。
そして、こんな過去にあった出来事の真実を明かすための機関が、韓国に存在しました。
『真実・和解のための過去事整理委員会』というのがそれです。
一般的に「真実和解委員会」と呼ばれる同委員会では、▲抗日独立運動、▲海外同胞史、▲韓国戦争(朝鮮戦争)前後の民間人虐殺、▲権威主義統治(韓国の独裁政権時代)に起きた重大な人権侵害、▲敵対勢力による犠牲などを調査し、その真実を明かすことが仕事となります。
一見しても100年以上の時間軸を扱う組織です。過去、置き去りにされたままの出来事から公式の見解記録を作り、政府はじめ関係機関への勧告や記憶の定立、補償などにつなげるという組織です。
この過程を経て「歴史になる」ということです。ラテンアメリカや南アフリカ共和国(マンデラ政権)で行われた事例を参考にし、設立されました。
同委員会は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の立法を経て、2005年12月から2010年12月、さらに文在寅政権時代に法改正を経て2020年12月から2025年11月まで、10年間の活動を終えました。
2万件の調査を行っており、昨年末の記事でも書いたように、この中に妻の祖父が虐殺された事件もはいっています。未読の方はぜひ。
そうした中、「真実和解委員会」で07年から09年にわたって委員長を務めた歴史学者の安秉旭(アン・ビョンウク)氏は15日、リベラル系日刊紙『ハンギョレ』に寄稿したコラムで、「真実・和解財団の設立」を訴えました。
その最も大きな理由として、国家による過ちが明らかになった場合にも、政府はその賠償手続きを司法府(裁判)に放り投げているというものです。
このため、裁判ができない人、判決を待ったまま亡くなった人(被害者)が存在するというのです。
また、訴訟に備えることにエネルギーが注がれ、「歴史的な省察と教訓という過去事の構造的な本質」が「疎かにされてきた」ともしました。
これらの問題を解決するために、委員会の活動が終わった今こそ「真実・和解財団」設立の適期が来たというのです。
安氏は財団が設立されるならば、人類の平和に寄与するばかりか、社会の葛藤と不和を先送りせず解決することにつながると強調します。
委員会の活動が終わった今、時宜にかなった提言だと思いました。安氏のコラムの最後の一文を引用して終わります。
家族と隣人としてつながってきた共同体が経験した戦争の惨劇は、誰ひとり例外でいられない痛みと犠牲として残っている。
国のどこにも、戦争の傷から逃れた場所はない。委員会の活動を共にしたポバン僧侶(著名な僧侶)はある日、私にこう言った。
「安委員長は、どの山に登ろうとも、その谷に埋められた冤魂たちの安息を願う祈りを捧げなさい」
これは皆に向けた言葉であろう。
2. 米財務長官が韓国ウォンを「サポート」
次は経済の話です。15日晩の韓国地上波ニュースのトップニュースで扱われたものです。
米国のベッセント財務長官が14日(現地時間)、自身のSNSに「最近のウォン安は韓国の堅固なファンダメンタルと合わない」と書き込み、その後、米財務省も「外為市場での過度の変動性は望ましくない」と同様の報道資料を出したといいます。ファンダメンタルとは、経済の基本的要素のことです。
これは2026年年初は毎日下落を続け、1ドル=1480ウォンに迫る中で行われた「口頭での介入」と受け止められ、大きく報じられました。「異例の出来事」と各紙は評しています。
これにより、今年はじめてウォンの下落は止まりました。
今朝のリベラル系日刊紙『京郷新聞』の一面も、この内容でした。筆者撮影。
背景には、トランプ大統領と関税交渉を行った結果、韓国は年間200億ドル(約3兆1500億円)の対米投資を行うことになっていますが、ウォン安が続く場合、韓国企業の投資余力を奪うという認識があると韓国紙は指摘しています。
韓国政府もまた、過度のウォン安に危機感を持っており、介入の意思を示しています。
しかし市場では世界経済への影響力からドル高は続くとの認識が強く、「政府の介入=ドルの買い時」という構図が出来上がっており、そう簡単な話ではない、という論調でした。
余談ですが、韓国の地上波テレビ3社は19時(KBS)、20時(MBC、SBS)、21時(KBS)と、ゴールデンタイムの編成がすべてニュースとなっています。ケーブルテレビの有力局もそうです。
YouTubeでいつでもニュースが見られる時代に、律儀にこの時間にテレビの前に座っている人は多くないかもしれません。
ですが、この昔からの習慣こそが「社会の動きを知り、関わることが重要である」という市民の認識を支えているのではないかと思います。ゴールデン=バラエティではないのです。
3. 今日16日、尹錫悦氏に初めての一審判決
連日、尹錫悦氏に関する裁判の話でややこしいと思います。それもそのはず、同氏が抱える裁判は8つもあるからです。
先日お伝えしたのは、その中で最も先に始まり、また、最も意味が大きい「内乱の頭目」嫌疑の裁判でした。検察から死刑「求刑」があり、一審判決が2月19日にあります。
今日、お伝えするのは「尹錫悦の8つの裁判のうち最も早く判決がくだる裁判」についてです。
嫌疑は大きく三つ。
(1)ちょうど一年前に現職大統領であった尹錫悦氏が逮捕される際、大統領警護処を私兵のように扱い逮捕を妨害した嫌疑
(2)24年12月3日に非常戒厳を宣布する過程で法に定められた国務委員(閣僚)の審議権を侵害(無視)した嫌疑
(3)にもかかわらず、戒厳解除後の12月6日にいかにも正当な手続きがあったかのように書類を偽造した嫌疑、などです。
検察は懲役10年を求刑しています。
判決は、なんと今日1月16日です。裁判は午後2時から行われ、これも国民の「知る権利」のため生中継されます。
この判決の過程でもし、「非常戒厳が内乱である」という見解が示される場合、冒頭で触れた「内乱の頭目」裁判における一審判決を予想する上で、大きな補助線となります。
こんな裁判の話題は、当分のあいだ続く予定です。
複雑ですが、韓国が非常戒厳(内乱)をどう乗り越えていくのかとも重なる、大事な過程です。うまく図を作るなどして分かりやすくお伝えします。
4. 「ソウル~平壌~北京」高速鉄道、李氏が習氏に提案
ここまでで3000字です。4つ目のこの内容を入れるかどうか迷いましたが、金曜日だしいいや、と思い入れます。
リベラル系日刊紙『ハンギョレ』による13日付けのスクープ記事です。
1月5日、韓国の李在明大統領が中国の習近平主席と北京で首脳会談を行った際、南北朝鮮と国際社会の共同プロジェクトへの実現支援を、習氏に提案したというものです。
その内容は以下の通りです。
(1)ソウル~平壌~北京をつなぐ高速鉄道の建設
(2)元山(ウォンサン)葛麻(カルマ)平和観光
(3)北朝鮮に対する保健医療協力
(4)広域豆満江開発計画(GTI, Greater Tumen Initiative)
簡単にその概要を説明します。(1)は文字通り、現時点では夢想に近いプロジェクトです。
(2)は25年7月にオープンした金正恩氏肝いりの観光地に対する観光で、国連制裁の外にある分野となります。
(3)も制裁の外にある人道的事業ですが、(2)と共に南北関係が断絶している中では実現の可能性が極めて低い状況です。
(4)は90年代に国連開発計画(UNDP)主導の下に始まった計画を元にしたもので、南北朝鮮、ロシア、中国、モンゴルなどが参加する巨大プロジェクトです。ロシアの参加を続ける場合、ウクライナ戦争が終わらない限り無理でしょう。
『ハンギョレ』よると、李大統領は習氏との会談に続き1月6日に行われた、李強首相との会談でも上記のプロジェクトに言及したそうです。
なお、習氏の反応は「良い提案」としながら、悪化したままの南北関係や北朝鮮に対する中国の影響力が限定的であることから、「忍耐が必要だ」というものだったそうです。
唐突な感がある4つのプロジェクトですが、観光・保健という制裁外である点や、国際プロジェクトであるという特徴があります。李在明政権の朝鮮半島問題へのアプローチの「拡張性」を示す内容と評価できるでしょう。
一方で、その具体的な内容を前に、00年代以降、北朝鮮政府を巻き込んだプロジェクトを一件もできていない韓国の姿を直視せざるを得ません。
南北間に超えられない壁がそびえ立っているのを感じます。
5. 今日の時事韓国語「두쫀쿠」
「トゥチョンク」と読みます。「두바이 쫀득 쿠키(ドゥバイ チョンドゥク クッキー」の略語です。
暗号のような言葉ですね。
報道によると「トゥチョンク」とは、2年前に世界的に人気を博した、ピスタチオ入りのドバイチョコレートにインスパイアされ作られた、韓国オリジナルのクッキーとのこと。
「ドゥバイ」は「ドバイ」、クッキーはクッキーですが、「チョンドゥク」というのは「もっちり」を意味します。クッキーの表面の食感から付いた名前です。
ひとつ当たり700円~1000円程度で売られ、韓国では今や、1時間並んでも買えないそう。
わが家のトレンド女王の娘はいち早く食べてみたと言います。
「アッパ(父)も食べたいよ」と入手を頼むと、「そこまでの味ではない」とピシャリ。その内たべてみたいと思います。
今日は以上です。
それでは皆さま、よい週末をお過ごしください。
私も見聞を広めに少し出かけてくる予定です。
アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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