[50号] 朝ロ“新条約”を韓国はどう受け止めたか

プーチンと金正恩両氏の危険な取引を前に、ひとまず冷静を保っている印象です
徐台教(ソ・テギョ) 2024.06.21
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 サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。

 日本各地で暑さが例年より早く訪れているというニュースを見ましたが、韓国もずいぶんと暑いです。ソウルの気温は昨日(19日)、35度まで上がりました。私が住む隣の金浦市も連日の33度超えで愛犬のベリー君と共にはあはあと荒い息を吐いています。

 例の本の仕事はまだ終わりませんが、粛々と進めています。もう少しなので朗報をお待ちください。焦燥感で倒れそうですが、終わりが見えます。

ベリー君です。首元に腫瘍ができ、手術で取り除きました。良性のようでしたがやや元気がありません。

ベリー君です。首元に腫瘍ができ、手術で取り除きました。良性のようでしたがやや元気がありません。

●「朝鮮戦争で戦闘飛行」プーチン大統領の歴史的発言

 そんな中ですが、世界を騒がせた朝ロ首脳会談に触れない訳にはいきません。憂慮されていた朝ロの結びつきがほぼ最悪の形で明文化された、と韓国の主流メディアは見ているようです。

 本来、18日から19日にかけて訪問するとされていたプーチン大統領ですが、実際には19日の午前2時20分過ぎに平壌郊外の空港に降り立ちました。

 ロシアメディアを通じ、滑走路横で手持ち無沙汰にウロウロする金正恩氏の映像が公開されていましたが、プーチン氏の相手を待たせる癖に例外はなかったようです。

19日午前2時過ぎ、平壌順安国際空港でプーチン大統領を出迎える金正恩氏。朝鮮中央通信より。

19日午前2時過ぎ、平壌順安国際空港でプーチン大統領を出迎える金正恩氏。朝鮮中央通信より。

 そして翌19日の正午過ぎから公式の歓迎式が平壌の金日成広場で開かれ、その後に拡大首脳会談、そして午後2時以降に単独首脳会談が開かれ、ここで両首脳は朝露の新たな条約に署名しました。

 その後、両首脳は1945年に朝鮮半島で日本軍と戦い戦死した約4万7千人のソ連軍兵士を追悼する「解放塔」を参拝し、歓迎公演を経て晩餐を持ちました。

 なお今回、プーチン大統領が「(朝鮮戦争時に)ソ連の操縦士が数万回の戦闘飛行を行った」と述べたことで、はじめてソ連が朝鮮戦争への参戦を公式的に認めるサプライズもありました。周知の事実でしたが、歴史的な発言です。

「解放塔」に参拝するプーチン大統領。朝鮮中央通信より。

「解放塔」に参拝するプーチン大統領。朝鮮中央通信より。

●争点は「自動介入」条項

 他方、外部の視線は、朝ロ間の新たな条約の内容に注がれました。

 特に、有事の際の「自動介入」が明記されるのか否かという点が大きなポイントとなりました。朝鮮半島で何かしらの戦闘が起きる場合、そこにロシアが入ってくる根拠となり得るという理由からです。

 19日に両首脳が行った会見で、プーチン氏は「本日署名した包括的同伴者(パートナーシップ)協定は、何よりも協定当事者のうち、一方が侵略される場合に相互支援する」と述べました。

 これを根拠に、韓国各紙は論を展開しました。

 通信社の『聯合ニュース』は、19日の記事では1961年にソ連と北朝鮮の間で結ばれ、ソ連崩壊後の96年に破棄された『朝ソ友好協助および相互援助条約(朝ソ同盟条約)』と比較した上で、過去には及ばないという見解を示していました。

19日の記者会見の様子。朝鮮中央通信より。

19日の記者会見の様子。朝鮮中央通信より。

 同条約では第一条で「一方がいかなる国家または国家連合から武力侵攻を受け戦争状態に直面する場合に、相手は遅滞なく自身が保有するあらゆる手段をもって軍事的およびその他の援助を提供する」としていたからです。

 プーチン氏の発言と61年の同条約のトーンがやや異なることから、一線は越えなかったという論調が散見されました。「同盟」という言葉を使わなかった点も注目されました。進歩紙の『京郷新聞』、『ハンギョレ』も「準同盟にとどまる」という見解でした。

 もちろん、00年に親善条約だった朝露間条約が24年ぶりに更新されたことについて最大限に警戒した上での見解です。誤解なきよう。

***

 一方の保守メディアには、かなり強い論調が見られました。

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