[61号] 金正恩氏がウラン濃縮施設を初公開した理由は?ほか
サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。
韓国は今週末から来週水曜日(18日)まで秋夕(チュソク)の連休です。中秋の名月に合わせ豊穣を願う民族の慣習です。多くの人が故郷を訪ねる“民族大移動”が起こる時期でもあります。私は妻の実家に行く以外に特に予定がないので(仕事は山積みですが)、ニュースレターを連休中にもう一本お送りします。
火曜日にYouTube『徐台教の韓国通信』を配信しましたがご覧いただきましたでしょうか。
今回はついに本格的な衝突が始まった尹錫悦vs文在寅という、新旧大統領の争いやディープフェイク生成AIを用いた性犯罪など重要な内容が多く、南北関係に多く触れることはできませんでした。
そのため今号では、いったん南北関係や朝鮮半島情勢を整理し、次号で韓国内の事情やドキュメンタリー紹介を行いたいと思います。特にドキュメンタリーについては、長く紹介が滞っていた間に秀作が何作も出ていました。こまめに紹介していきますね。
こちらが『徐台教の韓国通信(デモクラシータイムスch内)』のリンクです。
◎慌ただしい北朝鮮の「創建記念日」前後の動き
1948年9月9日を朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)が誕生しました。
この日について北朝鮮では「創建日(9.9節)」と呼び、国ができた日として祝います。一方、韓国では「政権樹立日」と呼びます。これは北朝鮮を国として認めていないためです。
さらに日本メディアでは「建国記念日」と書きます。複雑な朝鮮半島の現住所を表す呼称の差と言えますが、今年の「9.9節」を前後して北朝鮮で何があったのかを整理します。
・各国からの祝電
まずは各国の祝電がありました。朝鮮中央通信で届く度に記事が配信されるのですが、現在(13日午後)まででは以下の通りです。主要国からの祝電には簡単な内容も添えておきます。
・エチオピア、サヘレウォルク・ゼウデ 大統領(8月19日)
・カンボジア、ノロドム・シハモニ国王(8月23日)
・エジプト、アブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領(8月27日)
・バーレーン、ハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ国王(9月1日)
・インドネシア、ジョコ・ウィドド大統領(1日)「歴史的なパートナーとして両国の進歩と繁栄、そして地域と世界の平和を維持するために協力する用意ができている」
・アルジェリア、アブデルマジド・テブン大統領(2日)
・南アフリカ共和国、シリル・ラマポーザ大統領(3日)
・シリア、アサド大統領(3日)「両国の歴史的な親善関係を強化し相互協助を親善的な両国の人民の相互利益に合うよう様々な分野において発展させるため共同の努力を傾けていく」
・赤道ギニア、テオドロ・オビアン・ンゲマ大統領(4日)
・インド共和国、ドラウパディ・ムルム大統領(4日)
・ニカラグア、ダニエル・オルテガ大統領(5日)
・タイ、ワチラロンコン国王(6日)
・ロシア連邦、プーチン大統領(7日)「私はこれからも、私たちの共同の努力によりロシアと朝鮮民主主義人民共和国の間の包括的な戦略的パートナー関係を計画的に強めていくことを確信している」
・ベラルーシ、ルカシェンコ大統領(9日)「すべてのレベルの対話を発展させていることに対して満足している」
・ロシア連邦、ゲンナジー・ジュガーノフ共産党中央委員会委員長(9日)「先代首領の偉業を立派に継承している」
・パレスチナ、マフムード・アッバース大統領(9日)「朝鮮民主主義人民共和国政府と人民により大きな発展と繁栄があることを望む」
・モンゴル、ウフナーギーン・フレルスフ大統領(9日)「尊敬する閣下と閣下の立派な家族が健康で幸福であるよう願う」
・シンガポール、ターマン・シャンムガラトナム大統領(9日)
・スウェーデン、国王カール・グスタフ16世(9日)「人民に明るい未来と福利があることを願う」
・キューバ、ミゲル・ディアス=カネル主席(9日)「最も崇高な敬意を送る」
・ラオス、トーンルン・シースリット主席(9日)
・ベトナム、トー・ラム主席(9日)
・中国、習近平主席(9日)「中朝の両国は山と川がつながっており、伝統的な親善は歳月が流れるにつれより堅固になっている」中朝外交関係設定75周年を強調。
以上、23か国の国家元首が祝電を送ってきました。こうした点からは北朝鮮の幅広い国交の片鱗が見えます。
そしてこれらの国のほとんどが北朝鮮国内に在外公館を持つ国家です。北朝鮮は世界159か国(23年5月)と国交を結び、この中には英国、ドイツ、スペイン、オランダ、イタリア、豪州など世界主要国も含まれています。
国交が無い韓国や日本の視線で普段見落としがちな点ですが、その内実はともかく、れっきとした国家として世界に存在していることが分かる出来事です。
中国については、大使代理を送ったことを疑問視する記事がいくつかありました。
昨年来の北朝鮮とロシアの急速な接近を前に中国は距離を置いているとされますが、その現れという見方です。中国政府は12日「大使は休暇中」と明かしています。朝中関係については韓国内でも注目が集まっていますが、まだ分からないというところです。
また、北朝鮮専門メディアの『NKニュース』は9日、スウェーデンが平壌の大使館を正常化する準備を進めていると伝えました。
20年の新型コロナ拡散以降、スウェーデン大使館は現地スタッフにより運営されていましたが、大使がふたたび戻るということです。スウェーデン政府も大まかに認めています。同記事では他にもポーランドや英国も大使復帰の用意を進めているとしています。
また『聯合ニュース』によるとブラジル、モンゴル、ニカラグアなどの友好国は昨年12月から大使館を再開しているそうです。
同紙は西欧諸国の外交官の復帰をめぐり「北朝鮮国内の外交と安保当局間の見解の差がある」という元駐北朝鮮英国大使のコメントを掲載しており、興味深かったです。この部分が今後どう落ち着くのかからも、今後の北朝鮮の対外姿勢が読み取れそうです。
・金正恩氏の演説
8日、金徳訓(キム・ドクフン)総理や、崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長など北朝鮮の幹部が平壌市内の錦繍山太陽宮殿を参拝し、晩には金日成広場で国家創建を祝う大規模な祝賀集会が行われました。
平壌の金日成広場で行われた「9.9節」祝賀集会の様子。いずれも朝鮮中央通信より。
75周年だった昨年、金正恩氏は娘を伴い閲兵式を査閲し、演説を行いましたが、今年は76周年ということもあってか、いずれの行事にも金正恩氏は出席しませんでした。北朝鮮では通常「5の倍数」の年に記念日を大きく祝う傾向があります。
金正恩氏はその代わりに、朝鮮労働党中央委員会本部庁舎で演説しました。正確な日付は分かっていませんが、10日に朝鮮中央通信がこれを報じています。「9.9節」にこのような形で演説を発表するのは初めてのことです。
演説のタイトルは『偉大なわが国家の隆盛繁栄のためにより奮闘しよう」というもの。長さはA4で12枚ほどです。
韓国メディアではこの演説を「核武力の今後」と「経済」の二点から分析する傾向が目立ちます。いったんこの部分を見ていきましょう。