[72号:5月19日] 投票日まで15日、韓国大統領選の見どころ
サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。韓国の徐台教です。五月も半ばを過ぎてしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか。
突然ですが朝鮮半島の複雑な問題を表現する言葉に「トリレンマ」というものがあります。ジレンマが二つの項目を両立させられないことを示すならば、これは三つの項目を示します。朝鮮半島の平和を考える場合、(米中を基本とする)国際秩序・南北関係の改善・韓国国内の政治的対立の全てを満たす解決策は無いという、その難しさを表現するものです。
私もまた、トリレンマの中にあります。書籍入稿前の仕上げ、大統領選の取材・報告、家庭での諸事の中で、日々選択を強いられていますが、それもあと数日の辛抱です(本当に!)。その後は大統領選とニュースレターを中心に再編していきます。
とにかく、今後はその間の遅れを取り戻すために短めのニュースレターを頻繁にお送りすることになります。冒頭に日付けをつけておきますので、少しずつでもお読みいただければと思います。
◎韓国大統領選の候補たち
5月12日に候補者登録を終えた韓国では、大統領選が本格的にスタートしています。連日、関連ニュースがトップに伝えられ、18日には主要候補による初のテレビ討論会も行われました。現在の主要候補は以下の4人です。

筆者作成。
実際には7人が登録しています。しかし18日、6番の候補が立候補を辞退したため6人で争われることとなりました。番号は議席数によります。3番が欠番なのは、議席12の祖国革新党が李在明候補に相乗りすると決め、独自候補を立てなかったためです。
それぞれの候補の特徴を簡単に記します。
・李在明:圧倒的な議席数を獲得した実績をひっさげ、僅差で尹錫悦に敗れた前回大統領選の雪辱を図る。貧困家庭に育ち弁護士となった背景と、代名詞だったベーシックインカム導入政策とで2010年代に持っていた左派的なイメージはなりを潜め、自らを中道右派と位置付け幅広い層の取り込みを図っている。
・金文洙:すったもんだの末に与党候補となった人物。韓悳洙(ハン・ドクス)前総理との一本化で揉めに揉めたが最後は党員が金文洙の手を上げた。80年代は伝説の労働運動家として名を馳せたが後に保守派に転向。その後、京畿道(キョンギド)知事を務めるなどし、2010年代には極右に。尹錫悦の戒厳についても候補となったあとようやく謝罪。
・李俊錫:最年少の40歳(韓国では大統領の被選挙権は40歳からとなっている)。22年3月の大統領選、同年6月の統一地方選において、党代表として国民の力を勝利に導いたが、尹錫悦により追い出されため世論的にはプラスの要因がある。庶民の家に生まれハーバード大を卒業と、韓国の能力主義を体現したような人物。男女の分断、弱者への容赦ない視点でアンチフェミニズムに染まる20代男性の支持を集める。分断の政治というSNS時代の申し子のような人物。
・権英国:一貫して路上の市民と共に過ごしてきた人権弁護士。労働者やセウォル号遺族の側に一貫して立ち続けてきた。ソウル大工学部を卒業を金属加工と銃弾・砲弾製造で有名な企業に就職するも労働運動を組織を解雇。徳島大学に修士留学し、その後司法試験に合格し弁護士となった。00年代後半からの社会問題の最前線に立ち続けてきた。24年から民主労働党の前身・正義党で代表を務め、党名変更後の今も代表を続ける。

街のあちこちに貼られている選挙ポスター。李在明氏のものを毀損する事件が何件がありました。私の家の近所です。
選挙日は6月3日ですが、事前投票は今月29日と30日にかけて行われます。前回の大統領選では2日間で36.93%の有権者が事前投票を行いました。今回も似たような数値になると思われます。なお、不正選挙(裁判を通じすべて否定されています)の陰謀論を主張する人々は本投票の呼びかけを行っていますが、その影響はないでしょう。
それでは選挙の動向はどうなっているのでしょうか。韓国では相変わらず毎日いくつもの世論調査結果が発表されています。これを参考にしましょう。
なお、調査はいずれも電話を用い行われますが、面接員が市民と直接対話する調査とARSと呼ばれる自動応答(番号で返答する形)では、結果が異なります。
概ね、面接調査では与党支持が低く出る傾向があります。これは非常戒厳を強行し後に罷免された尹錫悦氏の所属政党(尹氏は17日に同党を離党)の候補を支持することを、「後ろめたい」もしくは「別に言いたくない」と考える人々が回答を控えるためです。
面接調査の代表格『韓国ギャラップ』の最新の調査は以下の通りです。
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