【デイリー・コリア・フォーカス】26年1月19日号

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徐台教 2026.01.19
誰でも

皆さまアンニョンハセヨ。

韓国から徐台教がお送りする「デイリー・コリア・フォーカス」。1月19日月曜日号です。

先週は大きなニュースが続き、なかなかハードでした。ですが週末を完全に休んでしまうと、仕事が回らないのも事実。当分は仕方ないですね。

さて、たまに聞かれる質問があります。

「『コリア・フォーカス』とはいったいどんなメディアなのか」というのがそれです。

韓国のソウル外信記者クラブ(SFCC)に登録していることもあり、韓国では日本に運営母体がある「外信(日本)メディア」という位置付けです。

実際にそうなっているのですが、その規模は小さなものです。フルタイムで働いているのは私一人で、必要な時に手伝ってくれる方が幾人かいる程度です。

このため、規模の面から青瓦台(大統領府)へと出入りできる資格を有していません。今年上半期は、この資格を取得することが目的の一つとなっています。

チームを作って報道の幅を広げることができれば、自ずと達成できるので、チームを作ること、つまりそれを維持する経済的な基盤を作ることが大きな目標となります。

いきなり何を語り始めているのでしょうか。

気を取り直して、まずは今日の目次から。以下の通りです。

1. 尹錫悦、初の判決は「懲役5年」…‘初犯’で情状酌量
2. 北朝鮮へのドローン、飛ばしたのは‘尹錫悦派(?)’の30代男性
3. 金正恩「悪い人として残りたくはない」…8年前に明かす
4. 「核は抑止力ではない」元北朝鮮外交官が語る‘マドゥロ拘束’
5. 今日の時事韓国語「개천에서 용 난다」

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1. 尹錫悦、初の判決は「初犯なので懲役5年」

16日午後、尹錫悦氏に対する初の一審判決がありました。

「初」というのは、8つある裁判のうち、最も早く一審判決が出るという意味です。

結果は懲役5年。その詳細は韓国の各メディアが報じていますが、ソウル中央地裁が配布した16ページにわたる説明資料が最も分かりやすいものでした。

これを見ると、昨年1月に逮捕される際、大統領警護処を私兵のように扱いこれを妨害したことが、▲特殊公務執行妨害、▲職権濫用権利行使妨害、▲犯人逃避教唆にあたるとするなど、検察側の主張を大きく受け入れる内容でした。

もう一つの主要な嫌疑であった国務委員(閣僚)の審議権侵害についても有罪としました。

非常戒厳は国務会議(閣議)を経て宣布されることになっていますが、当時、7人の国務委員が召集されませんでした。これが審議権の侵害にあたると裁判所が判断したものです。

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また、国務委員の署名入り非常戒厳宣布文を戒厳後に作成した点についても、虚偽公文書作成および行使にあたるとしました。

これは少し複雑です。24年12月3日晩の非常戒厳当日の国務会議は、わずか2分で終わりました。尹錫悦氏は審議や署名といった手続きを無視し、非常戒厳宣布を一方的に国務委員に告げ、部屋を出て会見に臨みました。

署名入りの宣布分は、3日後の6日頃になって、つじつま合わせのために作られたものです。

さらに、捜査の手が迫るやこの書類をも破棄します。この点も裁判所は、大統領記録物管理に関する法律違反ならびに共用書類損傷にあたると判断しました。

一方、「非常戒厳は正当であった」という旨を外信メディアに配布させた手順が職権濫用にあたるという検察の主張には、無罪が宣告されました。

24年12月3日、非常戒厳を宣布する尹錫悦大統領(当時)。悪夢のような出来事でした。YTNをキャプチャしたもの。

24年12月3日、非常戒厳を宣布する尹錫悦大統領(当時)。悪夢のような出来事でした。YTNをキャプチャしたもの。

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検察の求刑は懲役10年であり、この日、法廷でも裁判長は最大で懲役11年3か月まで刑を下せると量刑基準を示しました。

それではなぜ、判決は「懲役5年」だったのでしょうか。

やはり説明資料によると、先に言及した虚偽公文書作成やその破棄の場合には被告・尹錫悦が主導または確定的な計画の下に犯行を行ったと見られないとしています。

これに「刑事処罰を受けた前歴がない初犯である」点までを合わせ、尹錫悦氏にとって有利な情状であると明かしています。

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判決後の反応は、各自の立場によって大きく異なりました。

尹錫悦氏側の弁護人は「法律ではなく政治による判決」と遺憾を表明しました。弁護団は今週、控訴すると明かしています。

一方、与党・共に民主党は16日、「倒れた憲政秩序を正し、内乱の克服と正義の実現を渇望する国民の要求に応えるには遥かに不足している」と、司法府を批判しました。

特に「初犯」を情状酌量の根拠とした部分を取り上げ、「失笑を超え怒りを禁じ得ない」とすると共に「憲法を破壊する犯罪すらこのように寛大に処罰するとしたら、これから大韓民国の民主主義を何をもって守れるというのか」と強調しました。

別の論評では「実刑の宣告は(尹錫悦一党の)内乱犯罪に対する断罪が始まったことを知らせる信号」とも述べています。

最大野党・国民の力は、党としての公式論評を出していません。

報道官が「司法の判断を尊重する」と述べ、今後も尹氏の裁判に関連し同党は立場表明を行わないと明かしました。

たしかに、内乱は皆、初犯ですよね。この点はSNS上でも大きな話題を呼んでいます。

判決を宣告された瞬間の尹錫悦氏(右)。MBCよりキャプチャ。

判決を宣告された瞬間の尹錫悦氏(右)。MBCよりキャプチャ。

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最後に、今回の判決が持つ意味について触れてみます。

判決では、尹錫悦氏による非常戒厳の宣布が、内乱に当たるかどうかの判断は下していません。

しかし裁判所はこの日、「急を要した」と戒厳当日の簡略な国務会議を正当化した尹錫悦氏側の主張を退けています。

これは「メッセージ性の(国民に対する警告のための)非常戒厳」という、尹氏の主張を受け入れないことにつながるため、尹氏が続けてきた主張の一角が崩れたと見なすこともできます。

他にも裁判所は、尹錫悦氏側が非常戒厳後から一貫して行ってきた「不法な捜査」という主張を、完全に退けました。

尹氏側は捜査や令状審査の過程すべてが不法であるとしてきたため、この主張が一部でも受け入れられる場合、今後の「内乱の頭目」嫌疑の判決に影響が出る可能性がありましたが、そうした憂慮は無くなりました。

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なお、この日の法廷の様子はすべて生中継されました。宣告の瞬間、尹錫悦氏は固い表情でこれを受け入れました。

13日の死刑求刑の際にも余裕の笑みを浮かべていた以前までの様子とは異なると、韓国メディアも相次いで指摘しました。

裁判はまだ7つも残っています。自身が24年12月3日にいったい何をしたのか、現実と向き合う時間が尹錫悦氏にやってきました。

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2. 北朝鮮へのドローン、‘尹錫悦派’30代男性が実行か

今月10日、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の朝鮮人民軍が明かした「韓国からのドローン飛来」事件。

昨年9月と今年1月の2度にわたって侵入したドローンを撃墜したというものです。

韓国軍が関与を否定する中、誰の仕業か注目されていましたが、16日になって、韓国の捜査当局がドローンを飛ばした関係者を取調べているという一報が入りました。

さらに保守系日刊紙『東亜日報』系のケーブルテレビ局『チャンネルA』が同日、ドローンを実際に飛ばしたという人物のインタビューを報じました。

30代の大学院生と自らを紹介したA氏は、取調べを受けている人物が中国から購入し一次製作した機体を、さらに改造して飛ばしたとしました。

A氏。名字は「オ」さんであると聯合ニュースなどが報じています。チャンネルAをキャプチャ。

A氏。名字は「オ」さんであると聯合ニュースなどが報じています。チャンネルAをキャプチャ。

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A氏はその目的として、黄海北道(ファンヘプクト)平山(ピョンサン)郡にあるウラン濃縮工場付近の「放射線と重金属による汚染度の測定」を挙げています。このため、ドローンには放射線測定器を装着していたそうです。

同地域に対しては昨年、韓国の右派を中心に「河川が汚染され、その影響が韓国にまで及んでいる」という問題提起があり、韓国政府が下流にあたる韓国側で調査を行ったこともありました。結果は「異常なし」でした。

A氏は合計3回ドローンを飛ばしたとし、失敗した2回ではなく成功した際の映像も明かしました。この映像がA氏の主張の根拠であると、同放送局は明かしています。

なお、インタビューはA氏から持ちかけてきたそうです。

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ここまで見た人は、「工学好きの一般青年がやった」と思ったことでしょう。私もそうでした。

同氏は「動機があったので飛ばしてもよいと思った。韓国軍や北朝鮮軍の基地の撮影も避けた」と述べていたので、なおさらです。

しかしその後、一気にこの青年、A氏の身元チェックが始まります。

『聯合ニュース』や独立系メディア『ニュースタパ』、『京郷新聞』の記者などが、同氏が2015年から保守団体「韓国大学生フォーラム」で活動し、尹錫悦政権下で大統領府の報道官室に勤務した上に、2023年からは無人飛行体を設計・製作する会社の理事として在職していたと明かしました。

さらになんとこの会社は、2022年12月に起きた北朝鮮によるソウルへのドローン侵入事件に対するために設立されたものであるというのです。

これをもって『ニュースタパ』は、A氏が放射線の汚染度を測定するような「単純な好奇心」で飛ばしたというのは疑わしいと主張しました。

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ちなみに、16日に取調べを受けた人物も、A氏と似た時期に大統領室の同じ部署で勤務していたと、18日に『MBC』が報じています。二人は前出の無人飛行体会社の代表と理事でした。

またA氏(名前も既に出ていますが、主要メディアで明かしていないため私もこれにならいます)は、北朝鮮情報を伝えるメディアの発行人も務めているとされます。

右派人士との交流や大統領室との関係から、背後に巨大なコネクションがあるのでは?という陰謀論じみた話まで出始めています。

真相は遠からず明らかになるでしょう。今日はいったんここまでとします。

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3. 「悪い人として残りたくはない」金正恩が8年前に明かす

すでに4000字近いので、今日は短い内容をもう二つだけ書いて終わりとします。

韓国には2018年を、「バラ色の未来」という言葉と共に想起する人が少なからずいるはずです。

南北間の対話がいつになく進んだ当時、朝鮮半島の長年の悲願だった恒久的な平和が実現するかもしれないという期待があったからです。

しかし周知のように、翌19年2月にベトナム・ハノイで米朝首脳会談が決裂することによってこの期待は打ち砕かれ、同年下半期から、今に続く南北関係の断絶が始まります。

そんな2018年における金正恩氏の肉声を、韓国で近く出版される書籍が伝えているそうです。18日、リベラル紙『京郷新聞』が報じました。

18年4月27日、「板門店宣言」への署名を終え、抱擁する南北首脳。写真は板門店共同取材団。

18年4月27日、「板門店宣言」への署名を終え、抱擁する南北首脳。写真は板門店共同取材団。

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内容は具体的なものです。

18年3月に韓国代表団が訪朝(訪北)した際、金正恩氏は非核化や米国との関係改善への意志を示し、面談が終わる際には「非人間的な人物として名を残したくない」と述べ、信じてくれるよう韓国代表団に伝えたそうです。

同年9月にも訪朝した韓国代表団に対し、非核化の意志を改めて明かすと同時に、「口だけだ」とトランプ大統領への不満を述べたそうです。その上で「私は落胆しない」と対話を続ける意志を示したとのこと。

こうしたエピソードを含む本を書いたのは尹建永(ユン・ゴニョン)さん。

与党・共に民主党の現職議員で、18年当時は青瓦台(大統領府)の国政状況室長という現場監督にあたる職務にあった、文在寅の側近の一人でした。

今となってはにわかに信じがたい内容ですが、当時はこういう雰囲気だったことが分かる貴重な資料となりそうです。

一方で、こうした発言を公開しておけばよかったのにと思わざるを得ません。そうはできない事情があったのでしょうが、今さらこんな事を明かされてもね、といった感情も湧いてきます。

当時、金正恩氏の「本気度」に注目が集まっていたのでなおさらです。

他に、2018年12月13~14日にかけて、金正恩氏が訪韓する具体的な計画があったことなども書かれているようです。具体的な日程が決まったものの、発表前日に取り消しとなったとか。

背景には北朝鮮の朝鮮労働党政治局の反発があったとしましたが、その実は南北関係の進展に驚いた‘米国からの介入’であったとのこと。

買って読んでから、また報告します。

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4. 「金正恩は恐れるはず」元キューバ北朝鮮参事が語る‘マドゥロ拘束’

2026年の始まりを不安で彩った、米国によるベネズエラのマドゥロ大統領の拘束。今月3日にあった出来事です。

これが北朝鮮にどんな影響を与えるのかについて、在キューバ北朝鮮大使館で政務参事を務め、23年11月に韓国入りした元北朝鮮外交官リ・イルギュ氏が「週刊朝鮮」に語りました。保守系日刊紙「朝鮮日報」系列の週刊誌です。

17日付けの同記事でリ氏は「金正恩にとって、統制できないまま領空に『殺害(KILL)戦力』が進入し去って行く(ベネズエラのような)状況そのものが恐怖だろう」と指摘しました。

また「北朝鮮の防空網はベネズエラより劣る」とし、巷で述べられる「それでも北朝鮮には核がある」という言説についてはこう答えています。

「核のボタンを押せる人物が誰かという問題だ。金正恩を米国が捕まえるならば、核にどんな意味があるというのか。今回の事件を見て、北韓も核そのものが金正恩の身辺を守ってくれる協力な抑止力ではないという事実を悟った可能性がある」

なかなか興味深い視点です。

同紙が“一時は北韓外務省最高の中南米通”と持ち上げるリ氏のインタビュー記事は長く、これ以外にもリ氏が直接マドゥロ大統領と何度も会った際のエピソードなども語られています。

リンクを貼り付けておくので、翻訳ソフトなどを使いご覧ください。

リ氏は日本で『私が見た金正恩ー北朝鮮亡命外交官の手記』という本も出しています。『分断八〇年』を読んだ後にお読みください。

該当記事。画像をクリックすると記事に飛びます。週刊朝鮮よりキャプチャ。

該当記事。画像をクリックすると記事に飛びます。週刊朝鮮よりキャプチャ。

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5. 今日の時事韓国語「개천에서 용 난다」

今日は慣用句です。「ケチョネソ ヨン ナンダ」と読みます。

日本語では「小川から龍が出る」と直訳でき、その意味は「厳しい環境(逆境)から立派な人物が生まれ育つ」となります。

立志伝中の人物を評して使われる表現で、特に韓国が貧しい時代によく使われました。貧しさに耐えて立身出世すること、例えば、勉学に励み司法試験や医者になるといった具合です。

今ではあまり見なくなったこの表現をなぜ持ってきたかといいますと、週末、ある過去の書き込みが話題になったためです。

名門私大の延世(ヨンセ)大学医学部に通う女子学生が、早くに母を失い、姉と共に父の手で苦労して育った過程を同大の掲示板に書いたものです。

父も建設現場で大けがを負い働けなくなり、大学進学を諦め就職した姉と父の支えで韓国一の医学部に合格し、家庭教師のアルバイトをすることでようやく生活に余裕が出てきたという内容でした。

涙無しには読めない文章でして、多くの人にシェアされていました。

その中で、父が働けなくなった際、姉が妹にこう声をかけたのです。

「개천에서 용 한번 제대로 나 보라고」

「小川から出る龍にドーンとなってみせなよ」とでも訳せましょうか。この姉の経済的なサポートにより大学合格を勝ち取ったとのこと。印象深い部分でした。

***

今日は以上です。

週明けはニュースが三日分になるので、もっと書きたいところですが、既に6000字なのでいったんここまでです。

月内には独自チャンネルでYouTubeも再開する予定です。また、サポートメンバー向けのニュースレターも再開していきます。

それでは皆さま、今週もよろしくお願いいたします。

ファイティン!(徐台教)

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