【デイリー・コリア・フォーカス】26年9月2日号:「支持率30%台」、李在明政府の内閣改造に早くも‘黄信号’

皆さま、アンニョンハセヨ。今日も東京からニュースレターを配信します。
今日から、ニュースレターの新しい書き手として、日本在住のジャーナリスト・朴眞煥(パク・ジンファン)さんが参加します。韓国の日刊紙「京郷新聞」にコラムコーナーを持つ、日本と朝鮮半島に精通したジャーナリストです。ご期待ください。
(1)「支持率30%台」、李在明政府の内閣改造に早くも‘黄信号’
8月30日、G20会議に出席するため、具潤哲(ク・ユンチョル)経済副首相は仁川空港にいました。そこで知らされたのは自身の交代でした。予想外の出来事のためでしょうか、訪米を突然取りやめたものの、約1時間後に判断を変え、米国へ向かいました。
当初は小規模にとどまるとの見方もあった内閣改造ですが、ふたを開けてみると、李在明大統領が6省庁の閣僚を一気に交代させる人事を発表した日のことです。この慌ただしい人事の背景には、「支持率30%台」という重い数字があります。
定例調査を行う「リアルメーター」社が8月31日に発表した、李大統領の支持率は38.9%。7週連続で下落し、就任後初めて30%台に入りました。不支持は58.7%です。

李在明大統領の国政遂行への評価。青線が肯定評価で、これが支持率とされる。赤線が否定評価。下段は左から6月4週、7月1週と続き、右端が8月4週。調査聞かんは8月24日〜28日、全国の18歳以上の男女2509人への自動音声調査の結果です。誤差範囲は95%の信頼水準でプラスマイナス3.1%。リアルメーターより引用。
この数字を「呪い」に変えたのが、革新系の支持層に強い影響力を持つネットメディアの論客、金於俊(キム・オジュン)氏です。キム氏は自身のネット番組で「一度30%台に落ちた政権は、もう支持率を戻せない」と主張したのです。
この発言にいち早く反応したメディアの一つが、中道系の新聞「韓国日報」でした。
同紙は同日、「『支持率30%台に入れば終わり』キム・オジュン氏に反発した与党…李明博・文在寅モデルは可能か」という記事を掲載しました。
韓国日報が支持率を戻した例として挙げたのは、李明博政権と文在寅政権の二つでした。李明博政権には世界金融危機への対応、文在寅政権には新型コロナ対策という転機がありました。非常時に国民の支持が政権へ集まる現象が起きたのです。
今回の人事には、与党・共に民主党よりも左側にいる政党を取り込む狙いも見えます。
基本所得党(議席数1)の龍慧仁(ヨン・ヘイン、36)議員を性平等家族相候補に、祖国革新党(議席数12)の李海珉(イ・ヘミン、53)議員を大統領府のAI未来企画首席秘書官に起用しました。
これは、与党が中道右派を志向する中、一体感が失われつつある進歩陣営をまとめようとする人事と見られています。
背景には、次の総選挙への不安があります。与党の崔敏姫(チェ・ミンヒ、65)最高委員は、祖国革新党が独自候補を立てる場合、接戦の多い首都圏で「40議席ほど失う可能性がある」と警告しました。
つまり今回の人事は、与党が進歩陣営の他政党との選挙連携を、先取りしたものとも言えるのです。

基本所得党の龍慧仁(ヨン・ヘイン)議員。性平等家族部の長官候補に指名された。同氏のFacebookより引用。
特に、龍氏の起用は大きな注目を集めています。1990年生まれと若い上に、赤ん坊を国会に連れて来たこともある、さらにその党名の通りベーシックインカムをとなえるなど、進取性があるからです。
ですがこの人事は、早くも「炎上」の火種となっています。
比例代表議員の同氏は、閣僚になっても議員を辞職しない考えとされます。法律上は兼職できるのですが、比例代表は次の候補が議席を引き継げるため、入閣時に辞めるのが慣例でした。
しかし龍氏の場合は、特殊な事情があります。2020年4月、2024年4月と二度の国会議員選挙で当選しましたが、龍氏はその際、与党の衛星政党から立候補していたからです。
これは二大政党制を打破しようと行われた選挙制度改革を逆手に取り、二大政党が共に衛星政党を作る中で起きた出来事でした。
当選後に同氏は衛星政党をやめ、基本所得党に戻りました。今回、議員辞職する場合に、同氏の議席は衛星政党の人物に継承されます。
「議員ゼロ」となる場合、年間約11億ウォン(約1億2000万円)の補助金も途切れます。この事態を避けようと、龍氏は「議員と長官の兼任」を強行する予定です。
こうした龍氏の態度は自己中心的なものと捉えられ、野党はもちろん、同じ進歩派からなど、多方面からの批判に直面しています。
特に、2020年の選挙制度改革を主導したにもかかわらず、二大政党が衛星政党を作ったことにより、党勢を大きく損ね、今は議席ゼロとなった正義党からの反応は強烈です。

正義党の張慧英(チャン・ヘヨン)元議員。以前、本ニュースレターに気候してくれたこともあります。同氏のFacebookより引用。
同党の張慧英(チャン・ヘヨン、39)元議員は自身のFacebookに「衛星政党は民主主義に対する明確な侮辱だ」と書き込み、今回の出来事を民主主義を揺るがす出来事と受け止めています。反則で議員となった人物が長官にもなるのか、という怒りです。
龍慧仁氏は今後、国会で行われる人事聴聞会に臨みます。この席で、議員との兼職だけでなく、衛星政党から二度にわたって比例議席を得た経緯や、政党補助金の問題などを追及されることになるでしょう。
そうとはいえ、人事聴聞会制度は今や参考意見程度に成り果てているため、任命は最終的に大統領が決めます。それでも、聴聞会が政権批判の舞台となれば、支持率を立て直すための人事が、逆に李在明政権を追い込む可能性があります。
なお龍氏は2日、「人事聴聞会は国民と共に疎通する空間である」と述べ、意欲を見せています。
綱渡りといった感もありますが、それでも政権に救いはあります。
共に民主党の支持率は前週より1.2%ポイント上がって43.1%。李大統領を上回り、国民の力の37.7%にも先行しています。大統領から離れた有権者が、与党まで見放したわけではありません。
この与党支持を足場に、「民心」を取り戻せるのか。それとも大統領の支持率は30%台に定着してしまうのか。李政権は「30%台の呪い」に勝てるでしょうか。
朴眞煥(パク・ジンファン、ジャーナリスト)
今日は以上です。韓国では来年度予算案が公開され、様々な分析が出ています。また、朝鮮半島情勢においても、情報機関・国家情報院が「米朝会談はいつでも可能」とする一方、「米朝の具体的な接触のファクトはない」旨を明かすなど、不透明な状況が続いています。
こうした話もきちんと扱っていきます。
いずれにせよ、今日は「デイリー・コリア・フォーカス」の記念すべきアップグレードの日ということで、明日以降をご期待ください。
周囲の方にも広く勧めていただけると大いに励みになります。それではまた明日。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)。
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