【デイリー・コリア・フォーカス】26年1月8日号
皆さま、アンニョンハセヨ。韓国から徐台教(ソテギョ)です。
今日は欲張って5つのトピックです。5000字と多めになっています。まだちょっと、文字数のペースが掴めない状態ですが、試行錯誤にお付き合いください。内容はそれなりに面白いと思います。
今日の目次は以下の通りです。
1. 最大野党・国民の力代表がついに「謝罪」
2. 「内乱罪」尹錫悦の結審せまる
3. 李在明訪中終わる その成果と課題
4. 「ポロロ」で読む南北関係
5. 今日の時事韓国語「뽀통령」
1. 最大野党・国民の力代表がついに「謝罪」
7日午前、最大野党・国民の力の張東赫(チャン・ドンヒョク)代表が記者会見を開きました。タイトルは「勝つ変化」。
内容に入る前に韓国の国会構成について説明します。定数は300で、一院制です。現在は李在明大統領と、昨年辞任した印曜翰(イン・ヨハン)議員を抜いた298人が在籍しており、その内訳は議席数の順に以下の通りです。
◎共に民主党(与党)165議席
■国民の力 107議席
◎祖国革新党 12議席
◎進歩党 4議席
■改革新党 3議席
◎基本所得党 1議席
◎社会民主党 1議席
無所属 5議席
上記の一覧で、◎は進歩派を、■は保守派を指します。進歩派の中にも左派色におけるグラデーションがあるのですが、ここでは一旦置いておきます。
国民の力の話に戻ると、党はこの前日まで二つに割れている状態でした。
24年12月3日の尹錫悦大統領(当時)による非常戒厳を正当化する一派と、これを憲政を破壊する行為と批判する一派です。尹錫悦政権当時、国民の力は与党でした。
最も強く前者を打ち出してきたのが張東赫代表でした。党の支持率が20%台後半から30%台前半と低迷する中でも、頑なに尹錫悦支持を固守し続けていました。
この日の会見の要旨は「もう過去には戻らない」というもの。
まず、尹錫悦の非常戒厳を「状況に合わない誤った手段」と位置付けました。
さらに「国民に大きな混乱と不便を与え、自由民主主義憲政秩序を守ってきた党員たちにも大きな傷となった。国政を運営する軸の一つであった与党として、その役割を果たせなかった責任が大きい。その責任を重く痛感し、この点を国民の皆さんに深く謝罪する」と続けました。
その上で、▲青年中心の政党、▲専門家を中心とするネットワーク政党、▲国民と共感する連帯という三つの「勝つための軸」を掲げ、新たなスタートを切ることを宣言しました。
張東赫代表。会見を伝える同党のバナーより引用。
この日の張東赫代表の会見の背景にはいくつかの要素があります。
今年6月3日に、韓国の三大選挙の一つである4年に一度の統一地方選挙が控え支持率が低迷している点、後述するように2月に「内乱罪」で裁判中の尹錫悦氏の一審判決がある点などです。
有り体に言えば、「このままでは選挙は必敗」といったところでしょう。なお、昨年4月4日に憲法裁判所が尹錫悦大統領の罷免を全員一致で決めた際、韓国の有権者の約8割がこれを支持しています。
この謝罪という決断は、むしろ遅かったくらいです。
張東赫代表と国民の力の、尹錫悦にこだわる頑なな態度が、李在明政権の失態を批判する勢力の不在を招き、非常戒厳後に韓国政治が正常化することを妨げてきたからです。韓国政治最大の足かせが同党でした。
ようやく韓国政治が前に進むきっかけが生まれましたが、二つに分かれた党内はボロボロで、立て直しに時間がかかるでしょう。「尹錫悦擁護党」のイメージ払拭が選挙に間に合うかどうかは分かりません。
一方で、この日、尹錫悦氏との決別も宣言すべきだったという指摘もあります。保守紙『朝鮮日報』もこの点に触れました。これは一審有罪判決と前後して行われるとみられます。
2. 尹錫悦の「内乱裁判」結審日は9日
24年12月3日に非常戒厳を宣布したことで人生が一変した尹錫悦氏ですが、現在も拘置所に収容され、いくつもの裁判に臨んでいます。
その数は8つ。ここで全部並べるとややこしくなってしまうので、この一月に注目されるポイントだけ整理します。
ずばり、非常戒厳の宣布が刑法上の「内乱罪(内乱の首魁)」に当たるのかを問われている裁判です。昨年から最も長く続いてきた裁判で、最も重要な裁判です。
リベラル系日刊紙『ハンギョレ』は7日付けの記事で、「尹錫悦氏に適用される内乱の首魁の罪の法定刑は死刑・無期懲役または無期禁固の三つのみ」としています。
9日(明日ですね)の結審の際に、趙垠奭(チョ・ウンソク)特別検察官が求刑を行うことになります。それを受け、2月中にソウル中央地検刑事25部の池貴然(チ・グィヨン)判事が一審判決を下すことになります。
酒浸りの生活から解放(?)された尹錫悦氏。ソウル中央地裁提供。
韓国紙はさすがに求刑を予想することはしませんが、すでに司法部では24年12月の非常戒厳について「12.3非常戒厳の宣布は実体的な要件を満たさない違憲・違法なもの」と別の関連人物の裁判で結論を下しております。
この事から鑑みるに、重罪が宣告されるものと見るのが自然です。
先のハンギョレの記事では、1979年12月の軍事クーデターと翌80年5月の光州民主化運動で、内乱および内乱目的殺人の罪に問われた、全斗煥(チョン・ドゥファン)に死刑判決が出た点を想起させています。
なお、内乱罪を含む尹錫悦氏の8つの裁判はいずれも、年内に一審判決が出るとみられています。別途整理することにします。
3. 李在明訪中終わる その成果は
李在明大統領が7日、帰国しました。5日から7日まで、多彩な訪中日程を終えました。
その成果については、見方が様々です。
例えば保守系のシンクタンク『アサン政策研究院』が7日に出したレポートでは「北韓(北朝鮮)の非核化、西海(黄海)の構造物、限韓令など外交安保分野の懸案において韓中両国はいかなる進展や合意に到達できなかった」としています。
また、習近平主席が述べた「歴史の正しい側に立つべき」という発言を取り上げ、この発言が韓国に対し、▲米国と中国の間で「選択のジレンマ」を投げかけ、▲韓日の協力をけん制するものと、その圧力の程を警戒すべきという視点をにじませました。
米国と日本は「正しい側」ではないというのが、この発言の含意だというのです。
日本メディアのほぼ全てが取り上げている、「中国が日米韓協力に楔を打ち込んだ」という視点ですね。日中関係が悪化している点も関係しています。
先のレポートでもやはり李在明政権に対し、「韓中関係の回復にこだわる場合に国益を損なう」と警告しています。
今回の首脳会談により、明らかになった中国の真意に振り回される場合、韓米同盟や日米韓協力が弱まり、韓国の安全保障にも影響が出るということです。
韓米首脳。大統領室提供。
しかし、李在明大統領や韓国政府が、こんな中国の狙いを分からないはずはありません。
それを知った上で、昨日紹介したような習近平主席とのセルフィー撮影や、昨年10月にトランプ米大統領に金冠を送ると言った道化のような外交を演じている部分もあるのでしょう。
7日午後、李在明大統領は上海で随行記者団との公開記者会見を行いました。帰国前の会見は異例のことです。
非常に内容の濃い会見でここで全てに触れることはできないのですが、中国に対して「経済・安保・文化など全ての面においてとても重要なパートナーである」とし、「引っ越すことのできない隣人」という習近平氏の発言を冒頭で引用し、韓中関係の必要性を訴えました。
さらに韓中関係を「競争的な協力」と位置付け、「片方に偏らないようにする」と韓中関係の管理を強調しました。米国と日本やASEANとも「均衡をもって発展させる」と述べています。
また、先に挙げたような北朝鮮との関係、限韓令、韓中間の懸案についても「時間がかかるが進展するだろう、忍耐心をもって焦らずにいこう」という趣旨で一貫しました。
「歴史の正しい側に立つ」という習氏の発言に対しては、「正しく生きようという孔子の発言と捉えた」と煙に(?)巻きました。また、韓中関係には信頼の回復が重要で、互いに嫌悪しては対話にならない、まずは信頼しようと強調しました。
「嫌中・嫌韓」への質問が会見で二度にわたって出たことも印象的でした。
この話題がどう首脳間でどう扱われたのかに対しては、「不必要な葛藤の助長は行われるべきではない」とし、その対策と抑制を行っていくと韓国側の立場を明かしました。
李在明氏の特徴として、嫌中感情へ強い警戒心を持っている点があります。政治指導者として正しい態度でしょう。
李在明氏は、上海で1932年に尹奉吉(ユン・ボンギル)が起こした「虹口公園義挙(日本では上海天長節爆弾事件)」の現場にも立ち寄った。
来週13日、14日には李在明大統領が訪日します。記者会見でも中国からの輸出規制に直面する日本に対するエールとも取れる発言がありましたが、訪日時にもまた、日本へのリップサービスがあるでしょう。
曲芸のような外交ですが、こんな李在明の外交を韓国の有権者は支持しています。年末に各紙で世論調査が行われましたが、支持率は6割程度、支持理由の1位が外交です。
周囲を強国に囲まれた韓国が生き残るにはこうするしかないという感覚が、広く共有され支持されている点を知ることが大事でしょう。
これは別途書きますが、李在明政権に対しては進歩派を中心に、「絶対に失敗してはいけない」という雰囲気があります。この感覚を捉えることが肝要です。
一方で、こうした「国益重視」の姿勢からこぼれ落ちるものも多いです。歴史問題などがそれですが、この部分のバランスをどう取るのかもチェックする必要があります。
4. 「ポロロ」と南北関係
韓国に帰国した李在明大統領が、X(旧ツイッター)にあるコラムをシェアしました。週刊誌『ハンギョレ21』に掲載された「会え、ポジェミョンとポジョンウン」というものです。
著者は動物写真家のノ・スンテク氏。
その要旨はまず、24年12月の非常戒厳に際し、当時の尹錫悦政権が北朝鮮に対し行った軍事的な挑発に乗らなかった、金正恩氏の判断を評価するものです。
付言すると23年頃から24年10月にかけて、尹錫悦政権は北朝鮮に向け体制を批判するビラを散布し、首都・平壌にドローンを飛ばすなど、一触即発の状況をわざと作り出してきたとされます。
背景には、非常戒厳の要件となる「戦時」を作り出すことがあったとされ、尹錫悦氏や当時の国防長官は「一般利敵罪」の嫌疑で起訴されています。
コラムに戻ります。その上で、そんな尹錫悦が去った後も南北関係には何もないとし、ペンギンの写真と共に一匹では生きられないペンギンの同僚愛を強調します。
さらに、ペンギンを主人公に世界130か国に輸出された韓国の人気子ども向けアニメ『ポンポン ポロロ』が、南北合作であることを取り上げ、李在明と金正恩が会うことを望むものでした。
2003年に放送が始まった同作の第一シーズン52作のうち、22作は北朝鮮の「三千里総会社」が制作しています。当時の南北関係は今とは比べものにならないくらい良好でした。
李在明氏は先の上海での会見で、「韓国が(ここでは尹錫悦政権を指すのでしょう)北朝鮮に対し、敵愾心を誘発するような軍事的な挑発を続けてきた」とし、「対話が始まるには時間がかかるだろう」と述べました。
こんな「金正恩の忍耐」の真意と目的を分析するのは容易ではありません。
ですが、実際にそれが朝鮮半島の危機を緩和した側面がある点について言及することは、南北関係改善のために意味のあることであるのは自明です。
「また従北(北朝鮮に融和的な人物に対して、保守派が貼るレッテル)と言うのか」と李在明氏も会見で述べていましたが、すべてを額面通りに受け止め、政争の具として利用することは、事態の理解に役立たないこともあると知っておくのも大事です。
「今、この状態を維持・放置すること自体が、東北アジアと世界の平和にとって問題だ」という李在明氏の視点は正しいと思います。
首脳会談ができればよいですね。
5. 今日の時事韓国語「뽀통령」
長くなりました。今日の時事韓国語は「뽀통령」。ポトンリョンと読みます。
この「ポ」は先に紹介した「ポロロ」のポです。「トンリョン」は感じで「統領」、大統領(テトンリョン)から来ています。
意訳すると「ポロロ大統領」となるのですが、これは韓国の子どもたちにとって、「ポロロ」が持つ絶大な影響力を示す言葉です。
「とりあえずポロロを見せておけば、子どもの世話はどうにかなる」ということで、私も随分お世話になりました。
先のコラムもこうした背景が分かると、より理解が深まるでしょう。
黄色いヘルメットがポロロです。映画サイトより引用。
今日は以上です。
早起きするはずがまったくできず(昨日も遅くまで別の仕事をしていました)、こんな時間での発行となりました。
それではまた明日!アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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