[40号 K-4] ‘自由民主主義’統一方案の不可能性、戦意高める尹大統領、小中高生の「低い」統一意識の背景など全4トピック
サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。
息子を皮切りに一家がインフルエンザにかかってしまいました。私も火曜日午後からいくつかの強い症状に見舞われ、金曜日午後にようやく仕事に復帰しました。先にお知らせすべきでしたが、今週の発行が遅れています。週末に取り戻します。
皆さんもくれぐれもお気をつけください。本当にしんどかったです。それでは始めます!
◎尹大統領「北韓の挑発には一歩も引かない」…『西海守護の日』で
まず、昨日3月22日の『西海守護の日』のお話からです。
今から遡ること14年前、西海(黄海)上にある韓国領最西端の島・白翎島(ペクリョンド)沖で韓国軍の哨戒艦『天安』が沈没し、将兵46人が犠牲となる大きな事件が起きました。
韓国政府は信頼性を高めるため国際調査団を結成、原因を調べた結果、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の魚雷攻撃によるものと断定されました。
これを受け、当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領は5月に『5.24措置』を発表します。
開城工業団地以外のあらゆる南北交流を止めるという大きな効力を持ったもので、1998年から10年以上続いてきた諸方面での南北交流はこの時に事実上、断絶しました(開城工団は16年2月に閉鎖)。いわば今に続く南北断絶の嚆矢となった出来事でした。
2016年になって、天安艦が沈没した3月の4回目の金曜日は『西海守護の日』と定められました。天安艦の他に、同じ海域で過去にあった02年の第2延坪(ヨンピョン)海戦、10年11月の延坪島砲撃事件と合わせ、その犠牲者を悼む日となっています。こうした北朝鮮による相次ぐ先制攻撃により合わせて55人の死者が出ています。
平澤(ピョンテク)市にある第二艦隊司令部内に展示されている天安艦の実物。23年5月、筆者撮影。
22日、京畿道の平澤(ピョンテク)市にある第二艦隊司令部で『西海守護の日』記念式が行われました。同司令部は西海を管轄する韓国に3つある艦隊司令部の一つで、沈没した天安艦の母港でもありました。基地内には引き揚げられた同艦の実物が展示されています。
就任後、2年連続で記念式に参加した尹大統領は記念辞の中で、過去の将兵の名誉を称えつつ、北朝鮮に対し「今も絶え間なく西海と私たちの安保を脅かしている」、「大韓民国を『第1の敵対国』『不変の主敵』と呼んで脅威を与えることにためらいがない」と否定的に言及しました。
また「南北が過去70余年の間実質的な海上境界線として認めてきたNLL(北方限界線)までも不法なものと規定し、新たな海上国境線を云々している」とし、「西海の緊張を高めている」と述べました。
22日、『西海守護の日』記念式で演説する尹錫悦大統領。なお、沈没した『天安』の名は最新鋭の2800トン級護衛艦に受け継がれました。同艦は昨年12月に第二艦隊に実戦配備されました。写真は大統領室提供。
その上で「北韓がこんな挑発と脅しで我々を屈服させられると考えるならば、これは完全な誤算である」、「北韓が無謀な挑発を敢行するならば必ず大きな代価を支払うことになる」と警告しました。
いつものパターンと言えばそれまで批判したくなりますが、それでも『西海守護の日』が韓国軍にとって特別なものと考える場合、こういう言い方以外の選択肢は無いでしょう。緊張の高まりを止める素振りが見えない点は依然として危ういです。
記念辞ではさらに「国家に献身した将兵や戦死した遺家族を最後まで責任を持って支援する」という言及もありました。
一方でこの日、最大野党・共に民主党は「(昨年殉職した海兵隊の)チェ上兵の捜査が外圧により妨害されている」と、前号でお伝えしたイ・ジョンソプ豪州大使(元国防長官)召喚の一件に結びつけ、政府を批判しました。
豪雨で行方不明となった市民を探す過程で無くなったチェ上兵もまた、国家に献身した人物と言えるでしょう。しかしその事件の真相は明らかにならず、当初よりも少ない人物が捜査されているに過ぎません。結果として、尹大統領が言行不一致であるという批判を免れることはできないでしょう。
16日、大リーグ(MLB)開幕戦のために韓国を訪れたパドレスの選手(写真は往年の名投手、パク・チャノ)たちの子ども野球教室に飛び入りした尹大統領は「天安艦の犠牲者を忘れない」と書かれたポロシャツを着ていた。この服に対する尹大統領のこだわりは非常に強く、フランスなどの外遊時にも何度か着たことがある。大統領室提供。
なお、尹錫悦大統領の天安艦沈没事件へのこだわりを整理した記事を、去年書きました。興味がある方はぜひご覧下さい。
◎小中高生の統一意識「統一は良くも悪くもない」
統一部は16日、『2023年度学校統一教育実態調査』の結果を公開しました。これは小中高生が統一に対しどんな認識を持っているのかを調査するもので、14年から毎年行われています。
今年は756校、全80460人を対象に調査しました。学生は5~6年生が2万3794人、中学生2万6408人、高校生2万3789人と、それなりに大きな規模の調査です。昨年10月から11月にかけて行われました。
統一部の報道資料には25項目の調査結果が整理されています。全部は紹介しきれないので、重要と思える六つを選んで見ます。
一つ目は『北韓は私たちにとってどんな対象か』というもの。
最も多かった回答は「警戒すべき対象」というもので43.5%でした。次点は「協力すべき対象」で32.1%、次いで「敵対的な対象」12.5%、「助けるべき対象」7.4%と続きました。特筆すべき点として、「協力すべき対象」が2年前の21年の52.6%から大幅にダウンする一方、「警戒すべき対象」は同27.1%から大幅に上昇した点がありました。
二つ目は『北韓によって韓半島で軍事的な衝突や紛争が起きる可能性がどれ位あると考えるか』です。
これに対しては「とてもある」24.1%、「若干ある」56.5%と、可能性があるとする回答が合計で8割を超えました。「別にない」12.6%、「全くない」1.6%で、「分からない」5.3%でした。
『北韓によって韓半島で軍事的な衝突や紛争が起きる可能性がどれ位あると考えるか』。ある80.5%、ない14.2%。統一研究院資料より引用。
三つ目は『統一に対し関心があるか』です。
「関心がない」28.3%、「普通」28.0%、「関心がある」43.7%でした。「関心がない」は21年の22.4%から上昇した反面、「関心がある」は21年の50.9%から下降しました。