[27号]まるで映画?韓国週刊誌‘今年の人物’に「尹政権と闘う海兵隊幹部」が選出、最大の通信社に経営危機、保守で進む‘革新’、尹大統領の「暴挙」など 全8トピック
(12月29日)サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。
ニュースレター第27号をお届けいたします。年末進行で(使い方が間違っているかもしれません)発行の遅れを取り戻せていません。年明けからは新たな企画と共に正常化させていきます。
今号の目次は以下の通りです。
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韓国社会(1):「国家基幹通信社」聯合ニュースへの補助金が大幅削減で経営危機
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韓国社会(2):雑誌『時事IN』が今年の人物に、政府と対立する海兵隊幹部を選出
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韓国政治(1):韓東勲氏が与党の非常対策委員長に就任…「運動圏を清算」、「出馬しない」
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韓国政治(2):与党の前代表、李俊錫が離党し新党結成を発表…「自分だけが30年後まで生きて評価を受ける」
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ショートニュース:(1)トップ俳優、李善均さんが自死、湧き上がる「誰のせい」という声、(2)MBCが第四四半期の「よく見るニュース番組」で1位に、(3)尹大統領が夫人の株価操作疑惑への特別検察法に拒否権行使を明言、政界は真っ二つに、(4)梨泰院特別法の票決が年明けに持ち越し…来月9日に決着か
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あとがきに代えて
◎韓国社会(1):「国家基幹通信社」聯合ニュースへの補助金が大幅削減で経営危機
『聯合ニュース』といえば韓国最大の通信社で、日本では共同通信にあたります。毎日数百本のニュースを配信する、韓国メディアの生態系に無くてはならない存在です。
一方で、国庫から補助金を得ている点が共同通信とは大きく異なります。聯合ニュースには毎年約300億ウォン(33億円)が支援されてきました。
これは03年に制定された『ニュース通信振興に関する法律』によるためで、同法により「国家基幹通信社」に指定された聯合ニュースに「国家が同社のニュースを使う利用料」なども含め、補助金が支払われている形です。
ちなみに聯合ニュース社は1980年にいくつかのメディア会社が合併して発足した民間企業です。同法ではその役割を「国家基幹ニュース通信社として情報の主権を守護し、情報格差の解消および国民の知る権利の充足のための機能を遂行する」と定めています。
そして具体的な業務として、公共機関や国内外の言論メディアにニュースや写真、データや映像を供給すると指定しています。
この「国家基幹通信社」という役割は同社の信頼を高め、自社HPに大きく掲げるなど、同社のアイデンティティとなっています。もっとも、記者達の間では冗談交じりに「ずるい」とも言われているのですが(笑)

聯合ニュースのロゴ。国家基幹ニュース通信社と書かれている。
しかしこんな補助金が来年から大幅に削減されることとなりました。
韓国最大の労組の連合体である全国民主労働組合総連盟(民主労総)内の言論労組が運営し、韓国内の言論メディアウォッチを役割とする媒体である『メディアオヌル』の22日付け記事によると、「国家基幹通信社支援のため」の来年度予算は50億ウォン(約5億5千万円)と、23年度の278億ウォン(約30億円)から約82%の減額で確定しました。
なお、26号でお伝えしたように、韓国国会では21日に来年度予算が成立しています。
同記事によると聯合ニュースは年間1750億ウォン(約190億円)から1800億ウォン(約200億円)の間の予算で運営されているそうです。今回の削減と各機関のニュース利用料の削減により、来年の年間予算に「250億ウォン(約27億円)の穴が空いた状態」とのことです。
この事態を前に、聯合ニュースの社長は21日、社内向けの公示の中で今回の事態を防げなかったことを謝罪すると共に、政府に対しては「深い遺憾」を表明した上で、非常経営体制を敷くことを明かしました。
その内容はかなり職員のモチベーションに関連がありそうなものでした。
社長50%、常務30%の給料返納はまだしも、海外出張費や接待費の半減、ガソリン代支給の中止、語学学習支援金の廃止、配偶者などの健康診断費廃止などの福祉の削減があります。
同時に「労組と合意な必要な部分がある」としながらも、成果により給与を決める制度の導入も論じられています。広告事業の強化や外注化といった対策もずらりと並びます。

聯合ニュースのトップページ。同社の特徴は「記事改編OK」にあります。これにより各社ともに聯合ニュースの記事をちょこっとだけ変えて自社記事にすることが可能になります。韓国にネットメディアが乱立する一因となっています。筆者キャプチャ。
衝撃だったのは海外特派員の削減でした。
同記事によると「来年初めに任期が終わる香港、瀋陽、ウラジオストク特派員は後任を置かず支局を閉鎖する」とのことです。「シカゴ、ケニアなど10余人維持していた通信員網も3~4人に減らす」ともありました。
これを見たときに「ああ、ただでさえ韓国メディアが苦手とする北朝鮮内部ニュースの内容がさらに薄くなるな」と思いました。遼寧省の瀋陽市は同社の北朝鮮取材の拠点の一つです。
聯合ニュースの社長はこんな特派員の縮小を「公的機能の削減」と表現しています。国家の支援が減るため、公的機関であることを止めるという論理ですね。
繰り返しになりますが、韓国メディアは日本メディアに比べ海外ニュースの特派員の数がかなり少なく、その弱さを指摘する声があります。今回の動きがこれに輪をかけることにならないか心配です。
『ミディアオヌル』紙は22日付けの別の記事で社内の反応として、聯合ニュースの労組による「その被害は結局、すべて国民がかぶる他にない」という声明の中身を引用しています。
それではなぜ今回、予算が削減されたのでしょうか。答えはなんと「理由が説明されていない」というものです。
誰よりもこの話題に敏感なはずの労組の声明にも「聯合ニュースも正当な予算の削減ならば受け入れなければならない。しかし尹錫悦政権は削減の理由を今まで説明していない」と書いてあります。
声明にはさらに「削減は『政権の最高位層の意志』という噂だけ聞こえてくる」と、尹錫悦のせい、と言わんばかりです。
こんな指摘が出る背景には、ニュースレター第15号にも書いたように尹政権が「フェイクニュースの撲滅」という建前で言論メディアへの圧力を加えている事実があります。
聯合ニュースのあり方が独立不羈を尊しとすべきメディアのそれとして正しいのかという議論はさておき、韓国社会における同社の存在感を考える場合、今回の予算削減は確実に「韓国市民の知る権利の低下」という結果となって現れるでしょう。残念なことです。
◎韓国社会(2):雑誌『時事IN』が今年の人物に、政府と対立する海兵隊幹部を選出
ニュースレターで何度か引用してきた『時事IN(シサイン)』という韓国の週刊誌があります。おそらく韓国で最も硬派な週刊誌で、論調はリベラル、調査報道でも知られています。
そんな同紙が25日「2023年今年の人物」という記事を発表しました。
選ばれたのは海兵隊のパク・チョンフン大佐(52)。同紙は選出の理由について「‘正義’と‘真実’を重く見なす公職者が2023年を記憶するのに最も見合った象徴的な人物である」としながら、「逆に言うとこの二つの価値が色あせた時代の傍証である」ともしています。

『時事IN』の該当記事。筆者キャプチャ。
パク大佐はいったい何を行ったのでしょうか。同紙の記事や韓国メディアで明らかになっている内容を元に再構成してみます。
今年7月19日、韓国南東部の慶尚北道(キョンサンプクト)醴泉郡(イェチョン)郡の河川で、水害で行方不明になった住民の捜索にあたっていた海兵隊員チェ某上兵(21)が流され亡くなる事件がありました。
チェ上兵は当時、大雨で流量が増えた河川に、ライフジャケットも着用せず、海兵隊の半袖の赤いTシャツに長靴という軽装で立ち入っていました。
海兵隊捜査団長(捜査トップの職責)としてこの事件の捜査にあたったのがパク大佐です。
24日から28日にかけて捜査し、その結果を7月30日に李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防部長官に報告し決裁を受けました。
その後、翌31日にメディア向けの会見を行い、さらに8月2日に慶北(慶尚北道)警察庁に事件を移牒(移すこと)すればパク大佐の任務は終わるはずでした。
ですがここで大事件が起きます。7月31日の昼12時に、李国防長官が30日の決裁を取消し、メディア向けの会見を中止すると共に移牒を保留することをパク大佐の上官であるキム・ゲファン海兵隊司令官に指示したのです。
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