「まるで強制労働」外国人労働者の今、いびつな「男性嫌悪」、映画『ソウルの春』、選挙制めぐり共に民主党で激論など 全8トピック
(11月29日)サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。
ニュースレター第19号をお届けいたします。今号は韓国社会・韓国政治をテーマにお届けします。書き切れないほどたくさんの出来事が起きていますが、重要と思えるものをいくつかセレクトしました。
今号の目次は以下の通りです。
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韓国社会(1):来年度の外国人労働者受け入れは37.5%増、政府政策の裏にある問題点
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韓国社会(2):男性を卑下?ゲームの女性キャラクターの「指の形」が社会問題に
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韓国政治(1):文在寅政権下の総理2人が、共に民主党に「直言」
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韓国政治(2):「総選挙で負けたら辞任すべき」保守紙で強まる尹大統領への圧力
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カルチャー:映画『ソウルの春』が大人気
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ショートニュース:(1)釜山EXPO誘致に失敗(2)金建希大統領夫人が法律違反?YouTubeメディアの「おとり取材」が話題に(3)あの人気俳優と人気歌手に麻薬反応は「なし」
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あとがきに代えて:二日続けてYouTubeに
◎韓国社会(1):来年度の外国人労働者受け入れが37.5%増、政府政策の裏にある問題点
韓国の出生率は0.78とOECD(経済協力開発機構 )加盟国平均1.52の約半分しかなく、世界最低です。過去10年の間に20兆円におよぶ対策を行ってきましたが効果はなく、人口減少はもはや避けられない現実です。
こんな事情とセットで語られるのが外国人労働者の受け入れです。
韓国の雇用労働部は27日、来年度の「雇用許可制」を通じた外国人労働者(E-9ビザ、非専門就業ビザ)の受け入れ数を、今年の12万年から37.5%多い16万5000人にすると発表しました。
さらに飲食店業、林業、鉱業という人材難が深刻な職種での雇用も拡大するとしました。
こんな事実について韓国メディア各紙は飲食業団体の「人手不足解消に期待」という声を淡々と伝えましたが、それで終わる話なのでしょうか。
釈然としないままいくつかニュースをチェックしていたところ、今月10日から14日まで、地上波テレビ『SBS』が午後8時のメインニュースで報じた「人手戦争、私たちは魅力的ですか?」という企画特集を見付けました。約15分にわたるこの特集をまとめてみます。

「人手戦争、私たちは魅力的ですか?」というSBSの特集のメインページ。同番組よりキャプチャ。
10日にはまず、足元の韓国での話から始まりました。
韓国で合法的に外国人労働者を雇用できるようにする「雇用許可制」が施行されて20年。少子化による人手不足が慢性化する中でもはや韓国で外国人労働者は欠かせない存在になっているといいます。
これは第17号で紹介した「熟練工が足りない」というドキュメンタリーの内容とも相通ずるものでしょう。
23年9月時点で韓国内に暮らす外国人は251万人。人口の約5%に達します。なお、日本は22年の統計で約307万人と人口の2.4%です。韓国の外国人比率の高さが分かります。
取材対象はネパール。理由は「雇用許可制」で韓国に来ている外国人のうち、ネパール人が最も多いからです。
現地に飛んだ番組製作者側は同国内で熱心に韓国語を学ぶ市民の様子や、韓国での経験を元にネパールで市長を務める人物にフォーカスを当て「コリアン・ドリーム」の一面を照らします。
ニュースは一方で、韓国での生活により運命が変わってしまったネパールの人々も取り上げます。
出稼ぎ先の韓国で亡くなった夫の話を聞きに、ネパールの田舎まで訪ねていきます。石材工場で働いていた夫は普段から腹痛を訴えていたものの、会社は放置しついに会社の寮で亡くなってしまったというのです。
そこで明らかになったのは「職場の変更」を認めない韓国の「雇用許可制」の問題でした。職場を変えるためには雇用主の同意が必要な上に、一か所の職場でずっと働いてこそビザ満了後ふたたび韓国で働く機械を得られるというのです。
このため雇用主が王様のようになり、雇用主がやれという仕事をやらざるを得なくなります。ひどすぎる制度です。
ムスリムに豚の内臓の掃除をさせたという事例や、説明もしないまま機械の修理をさせられ右腕を失った男性の話が出てきます。
外国人の労災死亡率は、韓国人の7倍にのぼるそうです。
雇用主への隷属を招く「雇用許可制」については、韓国の国家人権委員会も廃止することを勧告しているそうです。「劣悪な環境でも雇用主の同意がなければ働き続けなければならないという状況は、事実上の強制労働に近い」という解釈です。
この制度が20年も続いてきた…ということを私もまた知らずにいました。
13日には日本が例に取り上げられました。「韓国は日本に追い越されている…『安く?ではなく選ばれてこそ』変わった日本」というタイトルで、日本が韓国よりも先行している事例について豊富な取材を元に整理するものでした。
まずは介護施設。「親切でやさしい。日本人と全く変わらない」という91歳の日本人女性に続き、「介護福祉士の資格を取らないとここに長くいることができない。だから一生懸命に準備している」というミャンマー出身の技能実習生の言葉が紹介されます。
さらに日本が19年に12の職種に対する「特定技能ビザ」を導入するや、日本に流入した外国人労働者が3年間で80倍に増えたと紹介しています。私もよく知らなかったのですが、1621人から13万915人に増えたというのはすごいですね。

日本の特定技能ビザ1号取得者の数。SBSニュースを引用。
韓国との制度の差については、日本の「特定技能1号ビザ」の滞在期間は5年と、先に触れた韓国の「雇用許可制」の4年10か月と似ているものの、業種内で職場の異動が可能である点で韓国よりも優れているとしました。大きな差ですね。
また、家族を呼び寄せ一緒に住むことができる「特定技能2号ビザ」を建設・造船に限る現状から拡大しようという動きがあるとも言及していました。
『出入国在留管理庁』にも注目していました。韓国では最近、「移民庁」が必要であるという議論が起きていますが、それに通じるものです。
次いで、外国人と対象に生活、健康、金融問題の解決を手助けする日本企業2社のサービスが紹介されました。
日本国内では移民政策について「まだまだ」という批判がありそうですが、見てきたように韓国からは日本が良い事例として見られている部分があるというのは興味深いところです。
特集の最後はドイツでした。
8400万人という人口の4分の1が外国人である移民先進国です。出生率の低下と製造業中心であることから韓国と似ているとしながら、高度人材の受け入れを中心に扱っていました。
まずは韓国からドイツに渡った韓国人IT開発社が2年9か月で永住権を得たとし、その制度『EUブルーカード』を紹介します。
これは非EU圏出身の高度人材を対象とするもので、大卒で年間8200万ウォン(人材不足分野では6400万ウォン)を超える場合に永住権をくれる制度です。
一方、韓国では同じ高度人材への扱いが異なるとします。
同じIT開発の分野で働くドイツ人労働者や「5年滞在、8440万ウォン以上」という条件を満たせず永住権を申請できていない上に、485時間の授業を経て真剣に合格しなければならない「社会統合プログラム」が足かせになっているというのです。

ドイツがビザ発給の対象となる職業群。IT,製造、福祉になるかな。SBSをキャプチャ。
同プログラムは政治、経済、文化などを学ぶもので、これを5段階まで合格することが永住権の条件となっています。ハードルは高く数千万円の年俸を貰う高度人材も合格できずに韓国滞在を放棄することがあると言及されます。
今年11月からブルーカードを取得できる職種を従来よりも拡大し、要求収入額も下げるドイツとの差が描かれます。
また、国だけでなく民間の積極的な役割も紹介されています。移民の受け入れに対する政治的な反対が存在するため、移民政策は時に後退や足踏みをするが、その度に学校や市民団体が政府の政策の隙間を埋めてきたというのです
余談ですが、ドイツの進んだ社会制度や社会の話に触れるたび、悲しくなります。私のメインの関心事である南北分断についても、ドイツの事例はたくさん言及されますが、そのいずれも現在の韓国では実現できていません。東西ドイツと異なり南北朝鮮は戦争を経験しているという歴史の違いがあるとはいえ、政治と民主主義の熟成度の差を突きつけられている気がします。
韓国政府の話に戻りましょう。
27日の外国人労働者受け入れ政策を発表する報道資料の中で政府高官は「来年の外国人材の導入規模の拡大は、内国人(韓国人)が忌避する人手不足の解消に大きく寄与すると期待する」とし「外国人材の迅速な導入と共に安定的な定着など滞在管理にも万全を期す」と明かしています。
依然として外国人材への狭い視野が目立つコメントと言わざるを得ないでしょう。今後も追っていきたいと思います。
◎韓国社会(2):男性を卑下?ゲームの女性キャラクターの「指の形」が社会問題に
韓国でにわかに理解しがたい騒動が起きています。
韓国のアニメ制作社「スタジオ・プリ」が韓国トップのゲーム開発会社「NEXON」のゲームを元に作った映像の中に登場した、ある指の形が発端となりました。
画像にあるように、日本では「ちょっとだけ」という言葉にでも置き換えられるような、小ささを示すジェスチャーです。

問題となったアニメの一部。左手が問題となった。同アニメをキャプチャ。
映像は23日に公開されたのですが、わずか0.1秒のあいだ表示されたこのシーンを見た男性たちが「男性嫌悪ではないか」として「NEXON」に抗議したのです。
背景には、韓国の一部急進的なフェミニストたちが数年前からこのジェスチャーを男性性器の小ささを卑下するものとして使っていたことがあります。
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