環境保護に逆行?使い捨て用品規制を「無期限延期」、公営放送KBSに新社長就任で大荒れ、政治のキーマンが登場など 全6トピック|第15号
(11月15日)サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。
ニュースレター第15号をお届けいたします。今号は一日遅れでの発行となってしまいました。お待たせして申し訳ありません。韓国社会・韓国政治をテーマにお届けします。
13号でお伝えしたように、どうしても韓国メディアの話題は政治が中心となってきます。来年の総選挙まで5か月以上あるのに、この調子で続くのかと暗澹たる思いです。
今号の目次は以下の通りです。ごゆっくりお読みください。
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韓国社会(1):使い捨て用品の規制を無期限延期に...「ポピュリズム」か「自営業者の保護」か
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韓国社会(2):公営放送KBSに新社長就任、いきなりの強権発動に「占領だ」との指摘も
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韓国政治(1):またしてもキーマンに金鐘仁?李俊錫を積極的に後押し
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韓国政治(2):“若造め!”吠える「86世代」のリーダーと次期保守のスターの争い
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ショートニュース:韓国社会を動かした小学校教師自死事件の捜査が終結/尹錫悦大統領を直撃、朝鮮日報の異色インタビュー
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あとがきに代えて:YouTubeはじめました
◎韓国社会(1):使い捨て用品規制を無期限延期...「ポピュリズム」か「自営業者の保護」か
日本でも導入が進む「紙ストロー」ですが、韓国では法で定めていた「紙ストローの導入」を政府が無期限延期する大きな方向転換がありました。
7日、韓国の環境部の次官は会見を開き、使い捨て用品規制の変更点を説明しました。
要点は「ビニール袋」「プラスチックストロー」「紙コップ」において、代替品への切り替えを強制しないというものでした。
韓国では再活用品法(リサイクル法)に従い、上記の品を使わないように規制することになっていました。今月23日までを啓導期間(予備期間)として、その後は取締りの対象になるはずでした。これが完全に棚上げとなったのです。
環境部はその理由について一つ一つ説明しました。
例えば「ビニール袋」の場合には自然で分解される生分解性のものや、政府指定の一般有料ゴミ用、さらに紙袋への切り替えが9割以上達成されたからとしています。
今後は守らない店に罰金を課すのではなく「生活文化として定着させていく」としました。プロの公務員の作文だな、と思わず唸りました。
次いで「プラスチックストロー」については“現場の苦労”を挙げました。
代替品となる「紙ストロー」の価格がプラスチック製の2.5倍(プラは約1.5円、紙は4円程度)にのぼる上に、飲み物の味を落とし、すぐにグニャグニャになり使いづらいというものです。
お店の現場では、コスト増と顧客のクレーム増に対応しなければならない二重の苦しみがあるとし、予備期間を延長するとしました。期限は今後決めるという、事実上の無期限延期です。
最後に「紙コップ」についてもやはりコスト増を挙げました。何度も使える素材のコップを使う場合に、食洗機を設置したり人手で追加で必要になるという指摘です。
政府は今後、紙コップを回収するシステムを整備し、切り替えに必要な費用を支援するとしていますが、いずれにせよ「規制」から「勧告と支援」への転換となりました。
食堂やカフェを営む自営業者たちは政府の発表を歓迎しました。
全国コンビニ加盟店協会は7日に出した声明の中で「今回の決定が困難な環境にある小商工人(零細、小規模自営業者)の経営負担を緩和することを期待する」と明かしました。
韓国フランチャイズ協会もやはり7日、書面で経営上の混乱を避けられた安堵の意を表明しました。
一方で、紙ストロー生産業者たちは大きなショックを受けました。
『京郷新聞』は予備期間の終了を見越し設備を拡大した工場を取材し、「政策による被害は政策を解決すべき」というオーナーの声を伝えました。
さらにこのオーナーは「先月まで『(規制の)基調に変わりが無い』と言っていた担当者と、今月2日以降電話がつながらない」という事情も明かしています。
青天の霹靂だったことがうかがえる内容です。
記事で紹介されている別の紙ストロー製造業者では発表の翌日8日、11人の職員全員が退社したそうです。同社の代表は「猶予期間が決まっていれば『もう少し待ってみよう』と引き留められるが、無期限では涙をのむしかない」と語っています。

環境NGO『緑色連合』は「環境部、使い捨て用品の規制を放棄」という声明を出しました。同HPをキャプチャ。
こんな被害を受けた業者たちは13日、環境部のオフィスがある世宗(セジョン)市の政府庁舎前で集会を開きました。「政府の言葉を信じたことを後悔する」としながら政府の決定取消や、生存を保障するための実質的な対策の必要性を訴えました。
さらに国民に対して「国産の紙ストロー業者が倒産し産業が崩れる場合、その後には品質の低い輸入産ストローに依存することになる」と語りかけました。健康被害が起きるだろうということです。政府は「業者達への支援を考える」と発表しました。
他方、韓国の代表的な環境保護NGOの『緑色連合』は7日、声明書を発表し「環境部が環境政策の責任を放棄した」と政府を強く批判しました。さらに「環境部は産業界の立場だけを代弁している」とも指摘しました。
過去の世論調査で70%以上の市民がプラスチックの規制に賛成しているのにもかかわらず、そんな消費者の声を全く聞かなかったというのです。声明は「これ以上、尹錫悦政権に国民の環境権を任せられない」と結ばれています。
それではいったい、なぜこんな決定が下ったのでしょうか。
政府が挙げた「自営業者の保護」の陰に「選挙用の政策」という顔が見え隠れするという問題提起が存在します。もしそうだとしたら、環境部を排除した形での何かしらの政治判断があったということになります。
この点に関して今はまだ多くが明らかになっていませんが、いずれ明らかになるでしょう。
最後に、様々な議論の中で目に止まったものを紹介して本項を終わります。
それは「紙ストローを使うか使わないかが重要なのではなく、ストローを使わない文化が定着することが大切だ」という指摘です。
つまり、代替品に焦点を当てるのではなく、環境保護という認識を持たせることが重要だというものです。
なるほどな、と思うと同時に、既にこうした認識を多くの人々は持っていたのではいかとも感じました。各種世論調査ではプラスチックが過度に使われている、というような認識が多くを占めているからです。
「世の中に逆行しているのでは」という批判が相次ぐや、環境部は8日に「今回の政府の決定は規制の一部を合理化したもの」と改めて立場を明かしました。
しかし政府は環境保護という面からも、また環境保護の議論の中身までも後退させてしまったのではないかと思わざるを得ません。
◎韓国社会(2):公営放送KBSに新社長就任、いきなりの強権発動に「占領だ」との指摘も
13日、日本のNHKにあたる公営放送KBSの新社長に、朴敏(パク・ミン)氏が就任しました。韓国の保守紙『文化日報』で編集局長まで務めた記者出身の人物です。
この朴社長の就任直後から、KBSは蜂の巣をつついたような大騒ぎになっています。
夜9時のメインニュース『ニュース9』のアンカー、午後5時5分からの人気ラジオニュース『チュ・ジヌのライブ』のMCなどがその日にうちに交替させられたからです。
さらに視聴率トップの時事番組『ザ・ライブ』は他の番組に差し替えられ、事実上の「廃止」となりました。
いずれも視聴者への別れの挨拶もないままの急な降板でした。
特に4年にわたり『ニュース9』のメインアンカーを務めた李昭政(イ・ソジョン)氏はいわば、KBSの顔の一人だった人物です。降板時には通常、視聴者に向けて1~2分の挨拶を生放送で行うのが恒例ですが、それすらもできない、文字通り異例の事態となりました。李氏が降板を知ったのは12日の晩だったそうです。

李昭政(イ・ソジョン)氏は11月10日が最後の出演となりました。同日の放送をキャプチャしたものです。
13日、新たなメインアンカーは『ニュース9』のオープニングで「これまで公営放送のアイデンティティを揺るがした政派性への論議を克服し、これから公営性を最優先の価値とするニュースプログラムを放送し、視聴者の信頼を回復するために努力する」と神妙な面持ちで述べました。
直前で降板を知らされたのは『チュ・ジヌのライブ』のMCチュ・ジヌも同様でした。
週刊誌『時事IN』記者だったチュ氏は李明博政権(08年2月~13年2月)時代に政権批判ポッドキャストのメンバーの一員として人気を博した人物で、李明博前大統領の不正に対する報道で知られています。
最近のラジオではあからさまな政権批判は控えている印象でしたが、保守派からは目の上のこぶのような存在であることは変わりません。
しかしKBSの労組はこんな一連の過程が正当な手続きにのっとって行われていないと反発しています。
同社の編成規約と団体協約では番組改編の際には担当の実務者と協議をすることになっており、緊急の編成変更の際には労組に通告する必要があるにもかかわらず、これらが無視されたという批判です。
労組側は「今回の措置は放送編成の自由と独立を保障し、誰であろうと放送の編成に関し規制や干渉をすることができないと明示した放送法に反する」と主張しながら、法的な対応を取る旨を明かしています。
韓国メディアによると、KBSの職員用のサイトには朴社長に対する内部からの批判の声が殺到し、一時接続が困難になるほどアクセスが集中したといいます。
朴敏社長は「マイウェイ」を貫いています。就任二日目となる14日にはソウル汝矣島(ヨイド)のKBSホールで国民向けの取材会見を行いました。
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