[35号 K-2] 強まる韓米・朝露それぞれの結びつき、日本も核使用計画に参加?、金正恩氏が明かす「南を叩く合法性」など

南北関係と朝鮮半島問題の一週間の動きをまとめたニュースレターとなります。
徐台教(ソ・テギョ) 2024.02.15
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 サポートメンバーの皆さま、アンニョンハセヨ。バレンタインデーの今日14日、韓国の首都圏では20度近くまで気温が上昇しました。ニュースでしきりに繰り返す「4月の陽気」という言葉を、毎夕の習慣となっている愛犬の散歩の際に実感しました。

 とはいえ、世の中はそんなにのどかではありませんよね。ガザで起きていることを筆頭に、あちこちで悲劇が進行中です。止められないもどかしさと怒りが頭の中で常に渦巻いています。

 そして朝鮮半島の南北関係もまた、一本一本、これまで当たり前だったものがそうでなくなっています。行き着く先に何があるのか。歴史は繰り返すという言葉が間違っていることを行動で示す必要があるでしょう。

 それでは過去一週間の南北関係と朝鮮半島問題の動きを見ていきましょう。なお、朝鮮半島問題というのは、朝鮮戦争の平和に関するものです。核問題や朝鮮戦争終結といった話題が含まれます。

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◎朝鮮半島問題の動き(2月7日~14日)

・強まる米韓、日米韓の結びつき

 まずは米韓の軍事的な結びつきについてです。韓国と米国の間には昨年4月の首脳会談の際に発表された『ワシントン宣言』に基づく『核協議グループNCG(Nuclear Consultative Group)』が存在します。

 これは北朝鮮の核の脅威に対する米国の拡大抑止を保障するための組織で、米国の核兵器の使用を含む戦略的対応を米韓が共同で協議する枠組みです。

 昨年7月と12月の二度にわたって関連会議が行われてきましたが、2月12日(現地時間)に米国で米韓代表が『NCGフレームワーク文書』に署名しました。

 韓国メディアによると、同文書には「NCGの設立背景、構成、参加、機能などNCGが指向する細部の目標が書かれている」とのことです。また、今回の署名を機にこれまで米韓のNSC(国家安全保障会議)が管理していたNCGを国防部が受け持つよう変更されました。

 NCGは今年6月に韓国で開催される三度目の会議で核兵器の運用計画を作成し、拡大抑止を完成させるものと見られています。そして昨年の二度目の会議後にも明かされたように、この計画を今年8月からの米韓による合同軍事演習『ウルチ・フリーダムシールド』で実際に訓練する見通しです。

12日(現地時間)、『NCGフレームワーク文書』に署名するNCG米韓代表。国防部提供。

12日(現地時間)、『NCGフレームワーク文書』に署名するNCG米韓代表。国防部提供。

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 一方で今後、このNCGに日本や豪州などの同盟国が参加する可能性があると韓国メディアは指摘しています。これに関連し『聯合ニュース』は12日付けの記事で、米国で行われた米シンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)主催のシンポジウムにおける米韓登壇者の発言を紹介しています。

 同記事によると、米国のソン・キム元米国北朝鮮特別代表、韓国の金聖翰(キム・ソンハン)元国家安保室長のいずれも、11月の大統領選挙の結果がどうなろうとも日米韓の結びつきは強まるという見解を述べたとのことです。

 特に金元室長は、NCGに日本が参加するのかという問いに「日本にかかっている。韓国(のドア)は開かれている」と発言し注目されました。

 金元室長はこの点に関し、安保室長として在職時に日本と議論したことがあるとし「NCGは万一の事態が起きたとき、核兵器をどうやって使うかに関するものなので、日本にとっては少し敏感な問題になる」と説明したそうです。

 記事ではまた、ロバート・ケプキー米国務副次官補(東アジア・太平洋担当)による同シンポジウムでの「米韓日3国は北朝鮮とロシアとの軍事協力にも共に対応している」という発言も紹介しています。

 北朝鮮とロシアとの結びつきが強まるにつれ、米韓日の結びつきも強まるという論理ですが、互いが互いを利用しているようにしか見えませんね。

 同氏はさらに、「米国は(北朝鮮と)対話を望み、条件を持たず対話するという立場を明らかにしてきた」ともしています。ニュースレターで何度も書いてきたように、朝鮮戦争を終わらせるという目標を掲げれば、北朝鮮は対話に出てくるでしょう。これは歴史が証明するものです。

 いずれにせよ、日米韓の結びつきは11月の大統領選以前まで強まり続けるものと見られます。トランプ大統領になっても後戻りしないような枠組み作りを急ぐことになるでしょう。

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・武器開発に勤しむ北朝鮮、目的はロシアでの販売?

 一方の朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は、新型武器の開発に余念がありません。12日、国営朝鮮中央通信によると前日11日、同国の国防科学院が「240ミリ操縦放射砲弾の弾道操縦射撃試験を行った」とのことです。

 『聯合ニュース』によると、これは多連装ロケット砲の誘導化に成功したということを指すようです。

 昨年8月に金正恩氏が砲弾生産工場を訪れた際に「122ミリと240ミリ放射砲弾の操縦化(誘導化)を実現したことは現代戦の準備において重大な変化」と述べて以降、実際に試験発射を行った事実を公開するのは今回が初めてとのことです。

 同記事では、国策シンクタンク『統一研究院』の専門家が試験発射の背景について「二重の用途がある」と述べています。一つは「実用的な次元としてロシアの注文を念頭においた可能性がある」というもので、もう一つは「対南戦争準備に言及する中で、韓国を圧迫する意図もある」というものです。

北朝鮮メディアが公開した「240ミリ操縦放射砲弾の弾道操縦射撃試験」の様子。朝鮮中央通信より。

北朝鮮メディアが公開した「240ミリ操縦放射砲弾の弾道操縦射撃試験」の様子。朝鮮中央通信より。

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 また14日には、東海(日本海)に向け巡航ミサイル数発を発射したと韓国軍が明かしました。前号でも言及したように、北朝鮮は今年に入り巡航ミサイル発射実験を続けています。今回が5度目になります。

 やはり『聯合ニュース』を見ると、こんな実験が続く背景について、韓国国防部は「ミサイルシステムの安定性を確保し、打撃の正確性を高める意図」と分析しています。

 その上で国策シンクタンク『国家安保戦略研究院』のミサイルセンター長による「ロシアへの輸出を念頭に置いて、着弾の様子を公開する可能性がある」という見立てを引用しています。

 こうした視点からは、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの兵器輸出が、北朝鮮にとって大きなチャンスとなっていることが透けて見えます。実戦に耐えるよう技術を進化させ、ロシアからの見返りも期待できるという文字通りの一石二鳥です。

ウクライナ内務省が公開した、ミサイル着弾現場の写真。同省テレグラムより引用。

ウクライナ内務省が公開した、ミサイル着弾現場の写真。同省テレグラムより引用。

 なお「北朝鮮版イスカンデル」と言われる北朝鮮の短距離弾道ミサイルKN-23がロシアに輸出され、ウクライナ攻撃に使われているという記事が、ウクライナ内務省が撮影した写真と共に米政府系メディアRFA(Radio Free Asia)に掲載されました。記事の現場はドネツクで、1人の死者と7人の負傷者が出たそうです。以前にはハルキウでも同ミサイルが使われたとのことです。

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