金正恩氏の「南北関係再定義」、狙いは韓国への‘核使用’正当化?
・南北は「別の存在」
朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の最高指導者金正恩国務委員長は、昨年末朝鮮労働党中央委員会第8次第9回全員会議拡大会議(日本では中央委員会総会とも)から今月の最高人民会議(国会に相当)にかけて、韓国に対し「絶縁状」とも取れる発言を続けている。
発言は多岐にわたるが、要約するならば「北と南は統一をめざす同族・同質関係ではなく二つの交戦国関係であり、韓国は第1の敵対国である」となる。その上で、北と南が同族であることを前提としたあらゆる概念、組織、施設、通路などをすべて過去のものにするよう命令し、この内のいくつかを実行している。
わずかひと月の間に南北分断史をすべてひっくり返すような(厳密には87年以降と考えてよいだろう)出来事が起きた訳だが、金正恩氏の狙いや心中がいかなるものなのかをめぐり、韓国の専門家たちは連日のようにシンポジウムや討論会を開き分析している。
筆者もできるだけ現場に足を運び、また各シンクタンクで公開されるレポートを読み込みながら議論を追いかけている。
そんな中、金正恩氏の狙いが「韓国への核使用の正当化にある」という分析をみかけたので紹介したい。一見すると突飛な話のように聞こえるかもしれないが、韓国の一線級の専門家によるもので、聞くと「なるほど」となることは請け合いだ。
「南北関係パラダイムの大転換:特殊関係から一般国家関係に?」と銘打たれたシンポジウムの様子。登録制であったにもかかわらず数十人の聴衆がつめかけた。筆者撮影。
・核は「軍事目的」か「外交目的」か
この見方を発表したのは北朝鮮の軍事や外交を専門とする朴元坤(パク・ウォンゴン)梨花女子大学北韓学部教授だ。
1月22日に開かれた民間シンクタンク世宗研究所主催のシンポジウムで朴教授は、金正恩氏の一連の発言の背景に6つの狙いがあると主張したが、その一つ目が「南に対する核攻撃を正当化する試み」というものだった。
論理はこうだ。